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「てか優斗は?」 「さっき電話したから多分もうすぐ着くよ」 父さんに頷き目を閉じる。 たくさんの視線を感じて居心地が悪かった。 「黒川さんっ!寝ちゃだめです!!」 目を閉じた途端聞こえる切羽詰まった声。 「…」 強く左手を握られもう一度目を開ける。 俺の手を握ったのは無表情な茶髪野郎だった。 きゅっと眉を寄せて『絶対だめです!』ともう一度繰り返す。その表情を見た途端ドキドキドキドキ・・・と速く動く心臓。 こいつ必死な顔もできるんだ。面白いなぁ。 「…ごめん、眠い…」 もっと色んな顔見たい、けど…眠い…。 俺は眠気に抗わずそのまま目を閉じた。 体を強く叩かれる痛さにハっと目を開けると優斗がベッド横に立っていた。 病室には気を使ってくれたのか優斗と俺だけになっている。 「廉!心配したんだぞ!!」 「優斗!……、…髪、…え?老けた?」 それに髪もめちゃくちゃ伸びてる。 父さんと同じように首を傾げた優斗。白く染めて後ろで束ねた髪がサラっと揺れた。 昨日まで俺と変わらないくらいの長さだったのに。 「失礼だな、1週間と少しでそんな変わった?」 体を起こそうとすると全身痛くて思わずベッドに逆戻りする。 「変わった…父さんも蘭もおかしい。白髪が増えてるしピアスも増えてる。昨日まで無かったのに」 「昨日って…蘭は昨日まで中国にいたんだぞ?」 「………は?昨日まで期末…」 中国?いつから日本は中国になったんだ。 どういう事だ。 「期末?てか父さんって呼び方懐かしいな〜高校生の時くらいだっけ?本当にお前頭でも打っておかしくなっ……いや、…ガチでおかしくなったか?」 「…あ〜…」 認めたくないがそうかもしれない。 知らない構成員に成長した理央、老けた父さんと優斗。 目を覚ましてからのおかしな出来事、ひとつの可能性が頭に浮かんだ。 よくドラマや恋愛映画である『記憶喪失』ってやつ。 問いに否定しない、できない俺に顔を強ばらせた優斗がナースコールのボタンを押した。

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