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2 side 黒川 廉
長い間、分厚いガラスの向こう側から名前を呼ばれている気がして早くそっち側に行かないと、と思っていた。
でも体が重くて痛くてついでに頭も痛くて、中々目を開ける事ができない。
「……ん…」
「自分が誰だか分かりますか?」
「黒川廉です」
やっと目を開けられて、医師や看護師が何かを話しかけてくる。
真っ白な天井、真っ白なシーツ、喋ると声がくぐもる呼吸器。そんな訳ないと思いたいが、何故か俺は病院にいた。
昨日は確か優斗と蘭と三人で期末テストが終わったから遊びに行って……。てか俺は黒川 廉に決まってんだろ。
当たり前の事を聞いてくる医師にうんざりする。それに返事をしたりしていると、勢いよく病室に入ってきた理央を見て驚き焦った。
「廉っ!」
「…理央?」
一瞬誰か分からず理解が遅れる。
俺の記憶の中の理央は声がそこまで低くなくて、背も高い方では無かった。
なのにたった今、目が合った理央は記憶の中の姿より幾らか大人びていて成長している。男感…増したな…。
「若!若!!若!!大丈夫ですか!!」
「黒川さん…」
理央に続いて入ってきた二人組。見た目が良く似ていた。
叫んでいる方の声は寝起きの耳に辛く、思わず顔を顰める。
もう一人は俺の名を呼んだきり、入口に突っ立ったまま能面みたいな顔で微動だにしないから正直不気味だ。
綺麗な顔してんだから笑えばいいのに。
「大丈夫ですか?」
「…うん」
近付いてきた無表情な青年は尋ねてくる。よく見ると色素の薄めな茶色い瞳には涙の膜が張っていた。
何となく頷くけどこんな二人、組に居たか?
パッと見、俺とそんなに歳は変わらない様な気がするが若と呼ばれている辺り構成員なんだろう。
「廉!!」
「よぉ廉〜久しぶりだな〜」
最後に入ってきた父さんと蘭を見て気を失いそうになる。
父さんの綺麗な黒髪には白髪が増えているし、蘭は昨日まで開いていなかったピアスが痛々しい程、両耳につけられている。高校卒業するまで校則違反はしないように気を付けようなって二人で約束したのに。
「父さんと蘭、老けた?」
俺の問いに父さんと蘭は首を傾げる。
白髪もピアスも、たった一日でこんなに増えるか?
おかしい。なんか変だ。
こんなの俺だけ昔のまま時が止まっているみたいだ。
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