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「ほら、…なんだよ…」 「……」 驚きで固まる俺。中々受け取らないから、蘭さんは痺れを切らして隣に座りペットボトルはカウンターに置いた。 「……糸、…糸、糸がっ…」 「糸?糸くず?取って?」 やっぱり蘭さんから伸びる赤い糸は俺の手と繋がっている。 「ヒッ」 身を乗り出してきた蘭さんと顔の距離がぐっと近付き、慌てて仰け反る。 …危ない…ドキドキした…。 黒川さんと別人だって頭では分かってるけど、双子ってこんなに似ているとは思わなかった。距離感バグるからやめて欲しい。 「あの…赤い糸って見えたりしますか?」 黒川さんが見えたんだから、もしかすると蘭さんも見えるかもしれないと思った。でも蘭さんは首を傾げる。 「いや〜。もしかして運命の赤い糸〜的な?」 「うーん…いや…やっぱなんでもないです」 「そう?じゃあそろそろ行こっか」 今度こそちゃんと案内できるようになったので歩き出す。 歩いている時も糸が存在を主張するようにキラキラ光ったりするから正直腹立つ。 俺の運命の相手は黒川さんだけなのに。 こんなの絶対おかしい。神様がいるなら謝ってもらいたい。 世間話をしながら歩いていると、数人の看護師が黒川さんの病室を出入りしていたのに気付く。 「なんか騒がしくない?」 「ですね…どうしたんだろ」 病室の前には琉唯くんと、正臣さんに支えられている理央がいた。正臣さんと理央は俺がいない間に来たみたい。 騒々しい状況に何かあったのかと不安になり蘭さんと小走りで琉唯くんの方へ向かった。 「あっ!華っ!若が目覚ました!」 すぐに俺に気付いた琉唯くんは俺の肩を揺らしながら興奮気味に教えてくれる。 そして隣の蘭さんを見て固まった。 「えっ、えっ??…え?」 蘭さんは『俺、廉の双子の兄。蘭って名前。』と、俺にしてくれた自己紹介を琉唯くんにしているが、琉唯くんには全く聞こえていない。混乱状態で瞬きを繰り返している。 「…もしかして廉、誰にも俺の事知らせてない感じ?」 「分かんないですけど少なくとも俺とこっちの琉唯くんは蘭さんがいる事知りませんでした」 俺も説明しようと思ったけど何から説明すればいいか分からずに苦笑いをするしかできない。 微妙な空気が流れ出した時、病室から黒川さんの声が聞こえてきたので急いで皆と共に中に入った。

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