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あれから一週間で黒川さんは退院した。
そして俺は黒川さんの真下の部屋に移って暮らし始めた。
黒川さんの下の階には誰も住んでいない。あの運転手さんが言うには『みんな若の下で暮らすなんて畏れ多い』らしい。
あ、運転手さんの名前は岩下さんっていうのを最近知った。『若の番』として構成員さんたちに把握されていた俺だけど、黒川さんが記憶喪失になったって知ってから構成員さんたちが励ましてくれるからまだ挫けずに済んでる。
「金条さん、棚はここでイイっすか!」
「え〜岩下センスなくない?絶対あっちだって」
「蘭さん静かに!岩下さん!そこがいいです!ありがとうございます」
ぶーぶー邪魔をしてくる蘭さんを黙らせて棚を運び入れてくれた岩下さんに頷く。暮らし始めたと言っても家具はまだ全然揃っていない。
今日も岩下さんや琉唯くん、蘭さんと4人でせっせか動いている。
壁や家具はもちろん黒ではない。基本は茶色にしている。
でも黒川さんと一緒にいるみたいにしたいから寝室だけは黒川さんの所と同じように全部真っ黒にしてしまった。
「華くん、これで最後?」
「ん〜、そうですね!」
蘭さんが運び入れてくれた本棚で最後。
俺の一人暮らし新居が完成した。これから一人で生活するという実感が湧いてきて寂しくなった。
「んあー疲れた〜!」
「蘭さんが運んだの本棚だけ…」
「皆さん!次は買い物ッスよ!」
伸びをする蘭さんにツッコミを入れる琉唯くんと、昼ご飯の買い出しにワクワクしている岩下さん。
4人で家を出て、キーケースから新しい鍵を取りだし施錠する。
新しい鍵の横に並ぶ黒川さんの家の合鍵の色がくすんで見える。
もう合鍵を使う事は無くなってしまった。
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