167 / 225

双子

昼ご飯は蘭さんの手作り冷やし中華。 岩下さんは蘭さんの手作り料理を食べるなんて畏れ多いと言って帰っていった。 自分の家のキッチンのように料理を作る蘭さんをこそっとダイニングから見る。 テキパキ作業をする蘭さんはどこかの俳優みたいで、とてもヤクザには見えない。 俺の視線を辿った琉唯くんがボソッと呟いた。 「…やっぱ似てるよな」 「黒川さんより言動が幼いけどね!」 琉唯くんに言うと、『今の若はあれより若い』と言われ黙るしかない。 確かにそうだ。 蘭さんは黒川さんと違ってイタズラ好きだった。でも今の黒川さんはそれ以上にやんちゃだって蘭さんは言う。 「お前、勘違いすんなよ」 「何言ってんだよ俺が好きなのは最初から廉さんだけだし」 いくら琉唯くんだからって俺の黒川さんに対する気持ちを疑うなんて許さない。 俺には黒川さんしかいないんだ。 初めて出逢ったあの日から。これまでも、これからも。 「番って…まるで呪いと狂愛だな」 「…それ失礼、純愛の間違いだよ」 琉唯くんの憐れむような視線から逃れるように、また蘭さんを眺めた。 変に喉が乾き、氷がたくさん浮いた緑茶を一気に飲み干した所で蘭さんが完成した冷やし中華を運んでくる。 「お待たせ〜」 三人で笑いながら話していても考えるのは黒川さんの事。 黒川さんの記憶は戻るのか、戻らなかったら俺はどうするのか、黒川さんが別の人と番になったら俺は耐えられるのか──みんなと居ても、一人で居ても、考えるのが止まらなくて嫌になる。

ともだちにシェアしよう!