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駅まで着く頃には汗だくになっていると思ったけど、もう夏から秋に変わりかけていて走った後でも涼しい。
お花屋さんに着いたら二人で店長と早野さんに挨拶して、黒のエプロンを付ける。
「バイト中に来ないといいな」
「まだそれは無いけど心配だわ」
琉唯くんと共に心配していたのは杞憂だった。
お客さんが入ってくる度に蘭さんなんじゃないかとビクつきながら過ごしていたけど、結局蘭さんは来なかった。
よかった…さすがにバイト先まで追っかけて来ないよな。
帰りの準備をしていると早野さんに話しかけられる。
「金条くん、抑制剤まだ持ってますか?」
「あ、忘れてた、結構前のなんで帰りに買います」
完全に忘れてた…。
黒川さんと離れ離れになって初めてのヒート。それは数日後に迫っていた。
黒川さんと暮らし始めてからは薬を使っていないから、持っている薬は結構古い物になる。
あぁ…抑制剤…バイト代が結構飛んでいくな〜…。
家賃もあるし生活費もあるしそれに薬ときた。
完璧に抑える効果があるのなんてないに等しい。
あるとしたら番だけだ。
しかもその番も今は別人、ほぼ他人なんだし頼れない。
俺がオメガじゃなかったらこんなに高い薬代も要らないし家族に心配かける事も無いのに…。と考えて深呼吸する。
オメガじゃなかったら黒川さんと出会えなかったのかもしれないんだし、プラスに考えよう。
そして帰り道に寄ったドラッグストア。
琉唯くんは口を開けたまま商品棚を凝視している。
「高いな」
「…こんなもんだよ」
ゼロが二つだけだったらいいのにそんな訳もなく、いつまで経っても変わらない値段の付いた抑制剤をレジへ持って行って購入。
一応錠剤と注射型どちらも買っておいた。
わざわざ病院に行かなくて買えるのは有難いけどこうも高いと買う気失せるよな…。
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