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てかもうそろそろ抱きたい。
さっき出したばっかだって言うのに怒張はもう天を仰いでいる。フェロモンの香りも時間が経つにつれて、香水より強くなり目眩が酷くなってきた。
「いい?」
鼻先が触れるくらいの距離で訊く。まぁ駄目とか言わせないけどな。
うん、と頷いたのを確認して優しく身体を押し倒したその時、ブーブーブーブー ──と鳴り響く着信音。
いつの間にか床に落ちていたジャケットが目に入る。
そうだ、スマホはポケットの中に入れてたんだ。
「ごめん、ちょっと電話」
これからお楽しみなのに邪魔されちゃ困るからすぐに終わらせて電源ごと切ってやる。
それを拾おうと茶髪に背を向けたと同時に、後ろから苦しいくらいの力で抱きつかれた。
「だめっ」
背中に頭をぐりぐり押し付けてくるのが可愛過ぎて危うく息が止まりそうになる。でも出ないとしつこい着信主は出るまでかけ続けそうだ。
名残惜しいが、電話に出るから一旦離れろと前にまわされた腕を軽く叩く。
「嫌だ!またどっか行くんだろ!」
『また』?そう言われても俺は知らない。
振り向くと茶色い瞳と視線がかち合った。
その瞳はあっという間に潤んであと少しで溢れそうになる。
その涙が溢れる前に拭おうとして、やめた。
「……」
そうだ、…よく考えると俺じゃないんだ。
こいつが好きで求めているのは記憶をなくす前の、大人の俺だから。今のガキの俺が触れる資格はない。
でも身体は素直で、触れて知って可愛がりたい欲が止まらない。
「…ごめん」
もう頭の中がぐちゃぐちゃで訳もわからず謝罪が口から出る。
それでも解けない腕。やめさせるのを諦めて腕を懸命に伸ばし、鳴り続けるスマホを取った。
着信名は『黒川 正臣』。応答ボタンを押すと、不機嫌な時の父さんの声が聞こえてきた。
『廉?何してるの?皆待ってるよ』
「いや…ちょっと…」
何って、ナニですが…と言えるはずなく誤魔化す。
電話口から父さんの声が聞こえたのか、ギチギチと腹を締め付けてくる茶髪をゆっくり撫でた。
早く自分に構えと言わんばかりの力強さに苦笑いしながら父さんと話す。
「茶髪の奴が離してくれないから行かない」
『茶髪の奴って…華くん?!』
「知らん。勝手に入ってた」
顔を上げた茶髪の、嫌だ、行かないで、と語る瞳に胸が苦しくなった。
でもそんな目をしなくても俺は結局いつでもこいつを優先する気がした。
『…名前…金条華くんだよ、お前の番だ。憶えてなくてもちゃんとした対応をしてあげて。総会の事は何とかするから。あと、』
「じゃあな」
それより未だにちょっかいをかけてくるこいつのワガママを聞いてあげないといけないような気がして、父さんが何か言ってるのも無視して通話を切った。
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