12 / 69

第12話(スティーブ)

WIAニューヨーク支部はカウムセット州立公園の地下にある。 カウムセット州立公園の中にある古い木造の、常に立ち入り禁止の物置小屋。 バイクで近づくと耳に着けている通信機からの電波を拾いドアが自動的に開く。 バイクで小屋の中まで乗り入れると、床の乾草が左右に分かれるように開く。 無機質なグレーの強化合成樹脂の床が現れ、そのままエレベーターでバイクごと地下へ降りて行った。 地下12階で停止すると、中は超近代的な軍事施設になっている。 200名ほどのエージェントや分析官などの職員が働いている。 すれ違うエージェント達はエージェントワイルドの登場に少し浮足立つ。 彼はある事件以来、WIAで最も信頼される存在だった。 スティーブは最奥にある作戦本部へと向かう。 すでにワイルド率いるチームブラックのメンバーは揃っていた。 チームはエージェントワイルドを含めた4人。 コードネーム•ワイルド チームの指揮官。身体能力、攻撃力。 コードネーム•ダイヤモンド ダイヤモンドの様に硬い皮膚を持つ美女。守備の要。 コードネーム•レッドファイヤー 体内に炎を宿し、自由に操る。 コードネーム•アイスマン レッドファイヤーの相棒。氷を自在に操る。 チームブラックは、超人的な能力を持ったレベルSクラスのエージェントチームだ。 作戦本部の巨大スクリーンでは、既に長官のスミスと通信が繋がっており、サブモニターには逃走中のワン分析官のデータが映し出されている。 「全員揃ったな」 スミス長官はゆっくり話始めた。 「今回、ワン分析官はWIAの極秘資料をUSB端末へ保存し本部から持ち出した。 更に、武器庫から1つまだ試作段階の武器を持ち出している」 モニターには金属の骨の様なアーム4本が映し出された。 「持ち出した資料は、以前メキシコで奪還した新薬デウスだ。この薬の情報をワンは何者かに渡すつもりらしい。今、全ての監視カメラで顔認証をかけて行方を追っている」 「問題なのはこの試作段階の武器だ。この四本のアームにはそれぞれ武器を装備している。 一本目はM134ガトリングガン。最大で秒間100発もの弾丸を打てる。 二本目は小型の誘導ミサイル。 ボールペンサイズの大きさの誘導ミサイル一発で敵の基地を破壊できるほどの威力だ。 三本目はFNH F2000。 アサルトライフルを改良し連射や狙い撃ちが出来る。 四本目は電磁バトン。 接近戦に強い近距離武器。強力な電撃で相手を倒して装備を無力化する。 この四本のアームは全てセンターのパワードスーツに接続し、まるで四本の手を同時に動かすかのように、戦える。複数人との交戦を想定して作られている」 「君達の任務はワンを捕らえ、情報と武器の奪還だ。すぐに準備を」 4人はそれぞれ、戦闘用のブラックスーツに銃や弾薬の装備を身に付けた。 その時、モニターから大きな電子音がした。 顔認証にワンが引っかかり居場所が特定出来たのだ。 「出動するぞ!」 4人は場所を確認すると小回りの効くカスタムバイクTRX850で出動した。

ともだちにシェアしよう!