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1.『気持ちの変化』

どこに行ってもクリスマス1色になったこの季節。 「ん~~っ…。やっぱ今日も寒いな……」 「………」 息を吐いて目に留まるのは真っ白な息。 「…?唯?」 「へっ?」 幼馴染みの遥馬にそう呼ばれ、はっとして顔をあげる。 「って…はる顔近くね!?びびった……」 「唯がぼーーっとしてるから!ほら、早く帰って暖まろーぜ」 「…なあ、はる……」 ーー聞きたいことがある。 そんな風に言いかけて、言葉が詰まる。 自分の好きな奴に彼女がいる…そんなことを本人に認められたら俺はこの先どうしたらいいんだろう? 考えたら考えた分だけ、なかなか勇気が出なくなる。 「ん?」 「あ、えっと………はる、に…聞いておきたいことがあって…」 「うん?…どーかした?」 聞かなきゃ、だめだろ……っ。 このままうやむやにしたって、いいことなんてない……! 今日こそ聞いて、好きだって言わないと 手遅れでした、なんてことにはしたくない… 「っ、聞きたいことと、伝えたいことが…あって……」 「…うん。とりあえず寒いから帰ろ?」 「………ん」 なんとなく足取りが重くなっていた俺の腕を、はるがそっと引っ張る。 「っ……、」 思えば、はるのことが好きだって気付いてから何気ないことでドキドキしてる自分がいる気がする。 今まで腕を引っ張られたり、自分から引っ張ったり…… こんな風に寒い冬なんかは、カイロを取り合ったりとりあえず身体を近付けて暖まろうとしたり… 今まで、自分がその都度どんな反応をしていたのか思い出せなくなる。 いっそ、俺のこの思いをはるが摘み取ってくれるならどんなに有難いことだろう。 もやもやしてドキドキして…どうしたらいいのか分からなくなるぐらいなら、いっそ好きだなんて思わなければ…… …いや違うな……。 好きだって思ったこと、気付いたことを否定したいんじゃない… だけど……はるは…遥馬は。 俺がはるを恋愛対象として好き、なんて知ったらどんな顔をするんだろう? 嫌がる、かな……?引くかな………? ふとそんな事が気になって、隣にいるはるの方に目をやる。 「っ!?」 「あ、やっとこっち向いた。」 「は、はる………なんで」 「ん?なんでって言われても……唯、すっげえ悩んでる顔してたから、かな?」 「……?」 「ははっ、自分じゃ気付かないんだろうなぁ…。」 んーーっ、と軽い伸びをしてからはるは言葉を続ける。 「唯は困った時とか悩んでる時、大体いつも同じ顔なんだよ。」 「同じ?」 「そう、同じ。俺が呼んでも気付かなくて、なのになかなか相談してくれねぇの。ま、今回はちゃんと話してくれるみたいだから少し安心だけどな」 へへっと笑うはるがすごくかわいくて、俺は思った。 ……はるは、俺が思いを伝えたとしても、嫌がったりとか引いたりなんてきっとしない。 そりゃ確かに驚くかもしれないけど…… はるに彼女がいるのか。 噂の真相を、ちゃんとはるの口から聞いた上で。 ちゃんと気持ちを伝えたらいい。 ゆっくり、自分のペースで大丈夫…! 「…うん、唯ちょっと元気になった!暗い顔、無くなってる」 「…………、まぁな。ほら、早く帰ろうぜ」 今度は、俺の力ではるの腕をぐいっと引っ張って走り出す。 さっきみたいな迷いは、もう随分解消されていた。

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