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4.『大好きです』
「…--唯っ!!!」
「……!」
目の前に現れたはるに、ただ口をぽかんと開けることしかできない俺。
そんな俺を見て、はるは自分のしていたマフラーを取って俺の首に巻いていく。
「は、る………」
「携帯、つながらないし…財布も持っていってないみたいだったから。本気で、ガチで心配した……」
「…ごめん」
「いや、無事で…よかった」
泣き笑いのような顔になったはるが、俺をぎゅうっと抱きしめる。
「はる、くるし……っ」
「もーちょっと、このまま……」
いいでしょ?と続けるはるに、俺はこくんと頷く。
おかしい、だろ…
はるに抱きしめられてる腕が、掴まられてる背中が痛いはずなのに
はるがここにいるってのが分かって、そんな痛みが嬉しいなんて……
今なら、素直にいえる気がする…。今しか、無いような気がする。
はるがした告白の返事とか、そういうの関係なくて…
ただ、俺のありったけの気持ちを、言える限り表現したい
前置きの深呼吸とかは必要なかった。
気付いたら、俺の口からあふれ出す思いが流れるように出ていく。
「はる。俺……はるが好きだよ」
「唯…」
「幼馴染みとしてじゃなくて、1人の男として。はるが…遥馬のことが好き」
自分の気持ちなんて、今更迷惑かもしれない。
お前がそんなやつだなんて思ってなかった、嫌いになった、そういう対象なんかじゃなかった……
どんな言葉が返ってくるのか、想像できなくて思わず目を瞑る。
それでも。
……言えて、よかった…
ずっと抑えて、抑えて…諦めようとして…
はるから返される言葉はもちろん怖くて不安だったが、自分の気持ちをちゃんと言えたことに幸福と安堵を感じた。
「ふふっ……」
「?はる?」
どきどきでいっぱいだった俺に返ってきたのは、はるの優しげな笑い声。
「言うの、遅すぎ……。この前もきれいに機会を逃していくから…もう言ってくれないんじゃないかって思ってた」
「……それじゃあまるで、俺が告白するの分かってたみたいじゃん…?」
「うん、いや分かってたよ?」
「………え」
当然のように答えられ、頭が混乱していく。
「え、待って…?だって俺、まだ誰にもこんなこと言ってないのに…なんで…?」
「…幼馴染みなんだから、それぐらいわかる。唯はいっっっっつも肝心なことは聞いたり言ってくれないまま自分の中でどうにかしようとするから。察しが付くよ」
「でも…だって!俺が…俺なんかが、告白するなんて、想像するわけないじゃん!だって…男同士、だし……ずっと避けてたのに………」
「それは……っ、俺が…っ!」
いつしか、俺とはるの目からはぽろぽろ涙がこぼれていた。
お互いの感情がうまく絡み合わなくて、うまく伝えられなくて……
「それは、俺が…唯斗のことを好きだから…だよ…」
「……ッ」
「ずっと、好きだった…。幼馴染みだなんて、思いたくなかった。それ以上でいたかった。…離れたく、なかった…」
「はる…」
「ヤキモチ、焼いてほしくて…告白の返事、迷ってるとか嘘ついた。最初から、とっくに答え…出てたのに…そのせいで唯斗を傷つけたなら、本当にごめん」
さっきまであんなにうるさかった周りの雑踏が急に静かになるような感覚。
「好きだよ、唯」
「は、る…っ」
今度は俺から、はるの細い首に腕を回す。
ぎゅうっと抱きついたその場所から、俺たちの思いが通じるような気がした。
「……俺も、はるに負けないくらい、はるのこと大好き…だから」
「うん………」
見つめ合った俺とはるが、そっと唇を重ね合う。
甘くとろけるようなキスが、寒さを吹き消すように包み込んでくれる。
「…メリークリスマス」
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