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13 運命(1) ~リュウジ~

放課後。 掃除当番が終わり俺とアオイ以外は帰って行く。 「お先ー!」 「おう、またな!」 そして、誰もいなくなった教室。 俺は、アオイに目配せをして腕を掴んで引き寄せる。 「アオイ……いいか?」 「うん……」 アオイは、素直に俺の懐にすっぽりと収まった。 俺がアオイの目をじっと見つめると、アオイは徐々に目を潤ませ頬を薄っすら赤くする。 そして、たまりかねて視線を外す。 「そんなに見つめるなよ……恥ずいだろ……」 ちょっと口を尖らせて呟く。 なっ……。 思わず絶句。 やばい。最高に可愛い。 俺は萌える気持ちを必死に抑えて、アオイの顎を指で抑え無理やり自分に向けさせる。 「こっちを見ろよ……」 「……分かったよ……ほら、これでいいだろ!」 見つめ合う俺とアオイ。 ああ、綺麗なアオイの瞳。 吸い込まれそう……。 そしてプルプルの唇。 いただきます……。 唇を重ねた後は、舌を少し出して、ちゅぱちゅぱと戯れるように絡ませ合う。 下唇を甘噛みしたり、濡れた唇同士を触れたり離れたりを楽しんだり。 んっ、んっ、んっ……ちゅっぱ……ちゅ、ちゅっぱっ……。 これが最高にエロくて気持ちいい。 しばらく、キスを楽しんだ後は、アオイの体を思いっきり抱き締める。 息が出来ないくらい。 アオイも回した腕をギュッとさせて体を密着させる。 とても積極的。 そして、抱きしめられている俺の胸の中で、小さく、喘ぎ声のような吐息を漏らすのだ。 きっと、アオイはハグが大好きなんだ。 そして、体を離すと一通りの俺達の『キス』は一旦終了する。 俺は、アオイの両肩に手を置いて言った。 「よっしゃ! 六日間連続キス達成!」 アオイは、ぷっ、と吹き出す。 そして、笑いながら言った。 「なんだ? 数えていたのか? リュウジ」 「もちろんさ。ユーチューブの『やってみた』に負けないようにな」 「ふふふ。やっぱり、ユーチューブかよ! 笑える!」 アオイは大笑いして目尻を指で拭った。 俺は、敢えて不服そうに言う。 「泣くほど笑うなよな、アオイ。俺は結構真剣なんだからさ」 「だってよ……ごめんごめん」 アオイは、そう言うと、小首を傾げてにっこりと笑った。 トクン……。 ダメだ。こいつ、可愛い過ぎる。 実は、俺はアオイとキスをする度に股間が痛いくらいに勃起してしまう。 アオイの甘い息遣い。 細身で柔らかい体の感触。 鼻をかすめるいい匂い。 キスだけじゃ、キツい。 このままじゃ、変になっちまう。 今直ぐこいつを抱きたい。 そして、一緒に気持ちよくなりたい。 でも、アオイの無垢な笑顔を見てると、中々踏み出せない。 アオイがそれ以上を望んでいない。 そんな風に思えてしまうからだ。 「どうした? リュウジ。帰ろうぜ!」 アオイがいつの間にか俺の顔を覗き込んでいた。 「あっ、ああ。帰ろうか」 俺は慌ててそう言うとカバンを手に取った。 学校帰りのコンビニ。 ベンチに座って美味しそうに唐揚げ棒を食べるアオイ。 俺も唐揚げ棒を食べながらアオイの様子を観察する。 こいつはどう思っているんだろう? キスの先。そう、セックスの事。 「なぁ、リュウジ。これ、絶対に揚げたてだぞ! すげぇ、上手いもんな」 「……あっ、ああ。そうだな。そうかもな」 ハムっと美味そうに頬をモゴモゴするアオイ。 わかんねぇ! こいつは天然過ぎる。何を考えているのか全く読めねぇ! 俺は頭を抱える思いで悩み始める。 こいつが超がつく程天然なのは最初から分かり切っている。 とはいえ、以前はどうだか知らないが、付き合い始めてからは、俺の事を好いているのは間違いなさそうだ。 ただ、性欲に関しては一般常識から確実にはずれている。 女にはあまり興味がなさそうだし、かと言って男に興味があるのかと言うと、それもよくわからない。 ただ、口からは、『男らしい』とか『男だったら』という単語がポンポン出て来る。 つまり、自分は男だと暗にアピールしているって事、なのだ。 そして、恋って概念も俺と認識が合ってない。 アオイの中では、『恋人』は親友の延長線上にあると思っている節があるのだ。 だから、スキンシップとしてのキスは有りでも、性欲の捌け口としてのセックスは、これっぽっちも考えてないのかもしれない。 はぁ、きっとそうだよな……。 アオイは、指先についた肉汁をちゅぱっと舐めて言った。 「なぁ、どうしたんだよ。リュウジ。難しい顔してぇ」 「あっ、ああ。そうだな……」 俺は、食べ終わった唐揚げ棒をゴミ箱に放り込んだ。 でも、やはりこのままじゃ、俺は耐えられない。 欲求不満が爆発してしまう。 ここは、ひとつ試して見るか……。 俺はチラっとアオイの事を見た。 アオイは、俺の回答を急かす。 「なぁ、リュウジ。何かあるんだろ? 言えよ」 「えっ……と。ほら、前にお前の家でオナニーしたことあるだろ?」 「ああ、あるな」 「また二人でやらないか?」 どうだ? 俺は、大した事では無いかのように提案した。 一緒にカラオケでもどうだ? そんな軽いノリ。 が、内心は心臓が飛び出そうなくらいにバクバクしている。 しかし、俺の心配をよそにアオイは何の躊躇もなく答えた。 「あー、オナニーね。いいぜ。また、うちでやろうぜ」 マジか……。 本当に、いいぜ、カラオケ行こう! ってノリで返ってきた。 俺は聞き返す。 「い、いいのか? 本当に?」 「ははは。いいって。ん? なんだ、リュウジ。お前、まさかそんな事で悩んでいたのか?」 「ま、まあな……」 「ははは。さては、お前、相当溜まっているんだろう?」 あっけらかんに笑うアオイ。 俺はそれを見て思う。 やっぱり、こいつは何も考えていないな、と。 アオイは、お尻を手でパンパンと払いながらベンチから立ち上がった。 「じゃあ、さっそく行こうぜ! 今日は姉貴達はいないから丁度よかった」 「おう!」 俺は、意気揚々と歩き出すアオイの後を追った。

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