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第6話
「桐島」
「……うん」
桐島をベッドに仰向けに寝させて、自身の服をすべて取り去ると覆い被さった。口づけをすると、桐島は堪えきれずに、片手で瞼を覆った。
「隠すなよ」
「……うん」
「かわいらしく、泣きやがって」
「……うん……」
頬に、耳に、首筋に繰り返される軽いキスに、桐島は唇を震わせながら、尋ねた。
「……俺だって、知ってて?」
「決まってるだろ。六年前からの緻密な計画だ」
「……黒沢が?」
なぜ、そんなことまで、と言おうとする唇を塞ぐ。わかっていることを聞くな、とばかりに。少し乱暴なキスになった。
「……全部、知ってるのに……痛っ……」
「ああ、全部知ってるよ、おまえのことなら。調べたからな」
悪びれない口調に、桐島は苦笑した。
「……副社長就任、おめでとう」
「……桐島」
桐島には驚かされることばかりだ。そんなことを知っていたなんて。ますますいい気に拍車がかかってしまいそうだ。
「……ずっと、好きだったから。きっと、黒沢が、俺を知る以前から」
「……桐島」
気が抜ける。緊張し続けていた肩の力を抜くと、黒沢は涙と汗で張りついた色素の薄い髪を、桐島の頬から撫で落とした。
「……そんなに簡単に言うな……」
「……どうして……?」
「こんな抱き方をして……大人げないって、……思ってるだろう?」
「全然……」
「嘘つけ」
「嘘つきは、黒沢の方でしょう。初めての時だって……」
「よく覚えてるな」
「忘れないよ……忘れられるわけないよ……」
「桐島」
「……あ……っ!」
濡れた、桐島の肌を抱きしめて、黒沢は押し入った。力いっぱい押し上げられて、桐島は呼吸をすることも忘れて身体を強張らせた。
「息、吐いて」
「……っ……あ……」
桐島の指が、黒沢の背を這う。揺らされる度に汗ですべる指を、必死になって絡ませてくる。新たな涙が、一筋、頬に伝った。それを唇で拭ってやる。
「おまえは……俺のものだよ……」
「どうして……そういう言い方しかしないんだよ……」
「そういうって……」
「好きだって、……言ってくれよ……」
「言ったら、それを宝物みたいに抱き締めて、俺から離れても生きていけるなんて、女みたいなこと考えてるんだろう?」
「……あ!」
激しく腰を突かれて、桐島は首を振った。
「俺は、放すつもりはないからな。もう」
「……黒沢……」
「何のために、六年もの間、おまえが客に抱かれてるのを知ってて、おまえに逢わなかったのか……。俺はな、おまえを自由にできる金も、束縛できる金も、持ってるんだよ」
息が、弾む。桐島の無意識の媚態に、胸が痛む。
「そんな価値がない、なんて、言わせない。俺を、こんなにしやがって。それだけで十分俺は、おまえに仕返ししても、いい立場なんだからな……」
「黒沢……あ、……っだめ……っ!」
「選択権をやる。俺が選ぶも同じ、だけどな」
「あ、ああ、……っあ!」
桐島は聞こえないふりをしているのか、それとも、本当に聞こえていないのか。快楽に素直に身を委ねて、黒沢の腕の中で身悶えた。
「黙って俺のものになれ。……なにも考えずに。いいな、……敦司」
「や、あ、……あ、ああっ……!」
腕の中の背がしなる。黒沢が達したのとほぼ同時に、桐島も達していた。答える間もなく、桐島は気を失った。
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