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第58話 不安2

 それは週の終わりの金曜日の午後のこと。 「社長、受付に社長の叔父だとおっしゃる方がお越しになられているそうですが」  内線電話の内容を伝えると、社長は顔を顰めてから深く溜息をついた。 「あのオヤジ、とうとう会社にまで来やがったか」 「社長、何か問題でも……?」 「あー……いや。……そうだな、ここに上がって来てくれるように言ってくれる?」  どこか歯切れの悪い口調。  どうやら社長の叔父は招かれざる客らしい。  しばらくして社長室へやって来たのは、恰幅のいい初老の男性だった。  社長とはほとんど似ていない。 「叔父さん、お会いするのは久しぶりですね。まあ、座ってください」 「…………」  社長がソファへ座るように勧めると仏頂面のまま無言で腰かける。  機嫌が悪そうだ。社長の方もまた笑顔はない。  なんとなく重い空気の中、俺はコーヒーを淹れるため立ち上がると、二人に一礼してから部屋を出て行った。  コーヒーを淹れ、社長室へ戻って来る。  扉をノックしようとしたとき、中から社長の怒鳴り声が聞こえて来た。 「……から、あの話は断っただろ!?」 「私はおまえのためを思って言ってやってるんだ!!」  続いて彼の叔父の怒鳴り声。 「大きなお世話だよ!」  なんだか二人は揉めているようで、俺は部屋に入っていくのを躊躇う。  コーヒーが冷めてしまうと思いながらもその場で立ち尽くす俺の耳にその言葉は飛び込んで来た。 「男は結婚してこそ初めて一人前なんだぞ、和希」  結婚という言葉に俺の心は過剰反応する。  ……和希さんに結婚話がある?  トレイを持つ手がカタカタと震えた。

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