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【リュウタロス】

「一緒に住まんか」 ぶっきらぼうに一言放つ。 ずっと、狂おしいほどに望んでいた言葉を、いとも簡単に口にしてくれるクマちゃんの、そんな不器用だけどストレートな一言に、ボクの中で長年(くすぶ)っていた“孤独”の恐怖が、一瞬にして消え失せる。 「──本当に?」 でも言葉にして確認しないと、まだ不安だ。まだ、夢の中に居るみたいだ。 「わいは、いつでも本気やで」 そう言って見つめ返す瞳に、嘘は無かった。 「ボクで、良いの?」 声が震えた。 「お前しか居れへん。 愛してんで」 言いながら頬を撫でてくれる。 『あれっ?』 それでようやく、自分が泣いていた事を知った。 「ダメだなぁボク。 最近、泣いてばっかみたい。前はこんなに泣き虫じゃなかったのに」 慌てて自分でも涙を拭う。その手を捕まれて、涙の付いた指に優しくキスを貰った。 「ちゃうで。逆や。 お前は今までずっと、自分に我慢をさせて来たんやないんか? 感情を、押し殺して来たんやないんか? そういう意味では、お前は“生きながら死んでいた”のかもしれん。 でも今はこうやって、わいに心の中の本当の自分を開いて見してくれとる。自分を隠す事無く、誤魔化す事無く、脆さも弱さも含めて全部、ありのままの自分自身をさらけ出して“生きとる”んや。 人間、誰かて他人に弱さを見せるのは怖い。 だからこそ、弱さを人に見せられる“勇気”を持ったお前は、もう十分、強い人間なんやで」 そう言ってまた、オデコにキスをくれた。 「クマちゃ、格好良すぎ‥‥」 ボク、良いのかなぁ? 幸せになっても、良いのかなぁ? 『辛い』のが当たり前に生きて来たから、見た事の無い『幸せ』に憧れて来た。 でもいざ目の前にすると、幸せになるのが怖くて怖くて仕方なくなる。 ──だけど、クマちゃんが居てくれるなら‥‥ クマちゃんが、隣で見ててくれるなら、もしかしたらボクも、一歩前に足を踏み出せるのかもしれない。 「こんなボクで良かったら、どうぞよろしくお願いします。」 まるで婚約するかの様な返答をして、満面の笑みを浮かべたボクは『まるで天使やった』と、後にクマちゃんから聞く事になる。 どちらかと言えば普段は“小悪魔”みたいに、わいを翻弄しやんのにな。なんて付け加えながら。 -END-

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