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第26話

ゆっくりと停車された車は受付けへと横付けになっており長岡はさっと部屋を選んだ。 ここって、この前のホテルみたいなシステムじゃないんだ… 選んだ部屋番号の書かれたガレージが開き、車1台分の駐車スペースに停車させた。 狭い駐車場には1つぽつんと扉がある。 目の前のドアから入室するらしい。 確かにこれなら人に見られる事はほぼなさそうだ。 いや、敷地に入ってからの話だが。 車移動が主流のこの辺りらしいモーテルタイプで良かったとほっと肩の力を抜いた。 「あの…」 「うん? どうした」 「中は…人、居ますよね」 「キャップのお陰で顔は見えてねぇよ。 俺の背中に隠れてろ」 鞄を手に車外に出た長岡を追って出て行くもドアの前で立ち竦んでしまう。 長岡の手─その小指─を握り息を吐いた。 「大丈夫です」 「行くぞ。 少しだけ我慢してくれ」 ほどける指に頷いた。 ドアを開けるとホテル独特のにおいに更に心臓が痛んだ。 タイル張りの廊下を真っ直ぐ進む長岡の1歩後ろを着いて歩くのが精一杯。 沢山の扉があるのだけは分かった。 各駐車場から入室するからか。 不思議な造りだ。 ここで鉢合わせなんてしたくないが、外から音はしない。 植物の植わった植木鉢が沢山並んだら待合室の様な不思議な空間を横切り漸くフロントへと辿り着いた。 中が見えない様になっているカウンターから長岡が鍵を受け取っている間も、キャップで顔を隠し俯く。 なんだか、見えないのが逆にいやらしく思えてきた。 カウンター内から音が漏れる度に心臓がきゅぅっとして気持ち悪くなりそうだ。 長岡は鍵を受け取ると、そっと三条の背中を押しフロントから見えないように背後に立った。 ボタンを押せば既に1回にいたらしいエレベーターはすぐに扉を開ける。 乗り込んできた長岡の影からカウンターを一瞥すると、そこに人影はなかった。 あちらも仕事なので慣れたものなのだろう。 でもやっぱり気まずくて背中に隠れた。

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