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第79話

ニャー 幼い鳴き声に、同室には仔猫がいた事を思い出す。 「あの、蓬ちゃんが…」 「ん? 蓬、今からイイコトするから柏の所にいろ」 構わずペッティングをしてくるが、どうしても気になってしまう。 「ドア…っ、自分で開けられ……ん」 ニャー 目が…… 子猫だしなんかいけない事してるみたい 恥ずかしい… ごろんと転がり腹を見せ撫でろと愛想を振り撒きはじめる。 ベルトにかかる手を思わず掴んでしまった。 「蓬?」 「……うん、」 蓬にも好かれるのは嬉しいが、先程から目が合っていてとても気まずい。 長岡は1度頬へとキスをしてから重い腰を上げる。 「よも、今は俺の。 下で待ってろ」 ぺちっと肉球が抵抗するが長岡はめげない。 これから恋人同士の甘い時間を堪能するんだ。 学校で友人同士のように振る舞う必要がないこの時間はしっかりと死守したいらしい。 「遥登は俺のだ。 俺が先に可愛がんだよ。 蓬は後で可愛がってもらえ」 抱えられた小さなふわふわはミーミー鳴きながら抵抗するが、あまりに小さい。 廊下に連れて行かれても諦める事なく鳴き続けている。 セックスの雰囲気でなければ抱き上げて撫でたいところだ。 「柏ぁ、蓬の事見ててくれ。 後できゅーるやるから」 階段を降りる足音と共に聴こえてくる声は家族に対しての穏やかなもの。 先程までのいやらしい空気を纏ってはいない。 なんか、急にすごい恥ずかしくなってきた……

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