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飼ってあげる 13
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珀英はオレの中で出したのを申し訳なさそうな表情をしたので、オレは笑ってキスをして。
しょうがないから今日は許してあげる。
怒ってないし不機嫌でもないことを伝えようとキスをした。
珀英は一瞬泣きそうに顔を歪めて、オレの中から出ると、濡らしたタオルでお互いの体を拭いて綺麗にしてくれた。
その後、優しくオレをベットに寝かせて、自分も隣に寝てオレのことをぎゅーーーって抱きしめてきた。
「・・・はくえい・・・苦しい」
オレがそう言っても、珀英はぎゅっと、オレの頭を胸に抱きしめて、腰を強く引き寄せて、足まで絡めて、全身ぴったりとめっちゃくっつけてくる。
「珀英?どうした?」
もぞもぞと顔を上に出して、珀英の顔が見える位置まで、顔だけ脱出する。目の前の珀英は、大きい目を苦しそうに細めて、柔らかい口唇を歪ませて、何故か泣きそうな表情をしていて。
オレを抱いた直後で、この表情(かお)はないわ。
オレは珀英が何を考えているのかわからないけど、軽く息を吐くと、珀英の口唇に触れるだけのキスをする。
優しいキスをして。
優しい声で子供をあやすように問いかける。
「何だよ?何考えてる?」
「・・・言えない」
「言えよ。オレは、お前のことちゃんと全部知りたい・・・」
「緋音さん・・・」
「全部、ちゃんと言え」
オレが強めに言うと珀英は泣きそうな表情のまま、更にオレを抱き寄せて、オレの肩に顔を埋(うず)めてしまった。
何か言ってくれないと始まらない。オレはもう一度珀英に問いかけようとした瞬間。
「・・・あの人・・・どういう関係ですか?」
珀英がやっとの思いで、絞り出したように言った。今まで見たことがないくらい眉根を寄せて、オレの瞳を見ないで、珀英は感情を押し殺した声で言う。
あの人って、誰だ?
一瞬さっぱりわからなかったが、居酒屋で珀英が殺しそうな勢いで睨みつけていたことを、思い出した。
オレは反射的に、珀英とは正反対の呑気(のんき)な口調でさらっと答えた。
「あの人って・・・カズキか?関係なんか、ないぞ、ただの友達」
「本当に?!本当にただの友達なんですか?!何もしてないんですか?!」
その言葉を聞いて、珀英がオレとカズキの関係を気にしていたことがわかった。まあ、あんな風に密着したら、そりゃあ気になるか。
いつもの悪ふざけだと言えば、それはそれで収まるだろうけど。それだけじゃあ足りないだろうな。
オレが過去にカズキと付き合ってたんじゃないかって、勘違いしてるっぽいし。
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