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満智

俺の初恋が終わっだ。 凪にハッキリ振らっち(られて)分がった事があった。 自分が、思いの外 傷付いでねがった事だ。 それで気付いだ。 俺は、多分『嗣治』という男を一目見だ時がら、こうなる事をどごがで予想しでだんだ。 アイツど一緒に居る時の凪の、幸せそうな顔を見だ時がら。 俺が 凪に 「すぎ」 の一言が言えねがっだのは、それを伝えっちまったら(てしまったら)、凪に『答え』を貰わねっかなんねぐなっ(なければならなくなる)からだったんだ。 俺は、我が(じぶん)が傷付くのが、おっかねがった(こわかった)んだ。 「これで  ()がったんだな‥‥」 ぼんやりど一人、会社の窓がら空を眺めだ。 「コレ!」 と、後ろがら何がで頭を叩がいる(かれる)。 振り返るど、オヤジが何がのポスターを丸めで手にしでだ。 「何サボッてんだにしゃ(おまえ)!  ちゃっちゃど仕事しろ仕事!」 「分がってる!」 ファミリー経営は、こういう所がめんどくせぇ。 「まぁまぁ。  満智さんだって、悩みくらいあるでしょ」 そごに(なだ)めに入ってくれる、入社3年目の『原隆治(ハラリュウジ)』 移住しで3年も経づのに、未だに標準語なのがおもし(おもしろ)ぐねぇ。 「隆治君は本当、満智に甘ぇな  あんま甘やがすど、ログな大人になんねぇべ。 将来嫁の来手も無ぐなったら困っぺ?」 でだ。オヤジの決め台詞。 最近じゃどんな話の流れでも、最後にはこごに行ぎ着ぐ。 あぁ~ めんどくせぇ。 「大丈夫ですよ。きっと」 笑顔で答える隆治に『どっからその自信は来んだ?』ど思わねぐもねぇが、まぁあれだな。 『財産』で言ったら、そうがもな。なんて自嘲する。 「ハイハイ。」 いつも通り流しで、パソコンのメール画面を開ぐど、凪がらのメールが1通届いでる。 他社がらのメールも全部後回しにしで、今朝届いだばがりのメールを開ぐ。 そごには、俺がアパートを世話しだ事ど値引きしだお礼、急に2人でアパートを引ぎ払っだお詫びど、俺への体調や仕事への気遣い、ほいで最後に、俺の幸せを祈っでいる。と書がれでいだ。 いや、むしろ迷惑掛げだの俺だし。 そう思いながら画面を見直すど、画像の添付。 そごに矢印を移動しでクリックするど、海辺で夕日をバックに、凪の頬にキスするアイヅどの2ショット。 クッソ幸せそうな凪の笑顔に、怒ろうどしだハズが、なんだが気が抜げだ。 が、よぐ見ると右下の方に 『ざまぁみろ』 の、手書ぎの文字。 そして 『お前も良い相手見つけろよ』 生意気にもそんな言葉が書がっちだ(かれていた)。 「余計なお世話だっつーの」 無意識に声に出でだらしい。 「ん?  何です?」 隆治が後ろがら覗ぎ込む。 「あ」 隠そうにも画面がデガぐで隠しきらんに(きれない)。 「あ。凪さ‥‥ん?」 隆治も凪と顔見知りだっつーのを忘っちだ(れてた)。 凪のプライバシーが‥‥ッ!凪の嗜好が‥‥ッ! 内心冷や汗で、そんじも(それでも)平静を装う。 「あ~~~。う~ん。  凪な~~、今ちっと友達ど海外旅行行ってで~~ ふざげで、こだ(こんな)写真送っで来だんだ~~ いや参っちまな~~」 うん。ダメだ。 俺。嘘ヘタだ。 我が(じぶん)にガッカリしでるど 「良い表情(かお)、してますね」 思ってだのど違う反応が返っで来る。 そういえばこの角度、オヤジがらは死角になってで、どんな画像を見でるがなんで、分がんねぇ。 話、合わしでくっちぇ(くれて)んのが? 「楽しそうで、良かったじゃないですか」 にこり。笑顔まで寄越しでくれる。 マジ助がる~。 「んだな  それが一番。なによりだ」 思わずホッと頬が緩んだ 直後。 「僕達もいつか、こんな風になりたいですね」 んんん? なんだが今、意味深な言葉が聞ごえだような??? 言葉の意味を理解する前に 右肩さ手を乗せながら、左側がらコーヒーカップを差し出す。 「コーヒーどうぞ」 耳元で囁いで、 「僕。俄然やる気出て来ました」 まだ、にこりと笑顔を向げで来る。 これ は ‥‥? 不本意ではあるが、どうやら俺にも、春が訪れる日が近付いで来でんのがも しんにぇ(しれない)。    ~おわる~

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