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嗣治

「 す き 」 あれ。俺今、幻聴が聞こえたっぽい。 やだなぁ。妄想しすぎて、とうとう俺の願望が幻聴になったみたいだ。 よりによってこんなタイミングで。 自分のバカさ加減に、笑いが込み上げて来そうになった瞬間。 「嗣治くんが」 ぼろぼろ涙を零して、今度はしっかり顔を上げて 凪さんが 「好きなんだ」 ハッキリそう言った。 「え」 幻聴じゃなかった。けど、思考が追いつかない。 言葉を理解するための脳が、働いてくれない。 コレ。現実だよね? 「ごめん」 ぼろぼろ泣いて 「男同士なのに」 でも。一生懸命 話そうと 「気持ち悪いよね」 聞いてあげなくちゃ 「俺」 凪さんが 頑張って 「嗣治くんを」 一生懸命 「性的な目で」 俺に 伝えてくれて 「 見てたぁ‥‥ッ あぁぁあ~~ん」 声を上げて、泣く凪さん     も     無理。 大きく開かれた口に目掛けて、舌を差し入れる。 「ん。 んン‥‥」 泣き止んで欲しくて、華奢な身体も思いっきり抱きしめて 凪さんの舌を(すく)って、絡めて、吸って。 涙混じりの凪さんの口腔内はしょっぱかったけれど、幸せの味がした。 「んク。ん。ふン」 息苦しそうにしている凪さんにハッとして、夢中になりすぎていた自分を反省する。 「ごめん!  苦しかった!?」 ようやく離した口唇からは、どちらの物とも分からない唾液が顎まで伝う。 エェッロ!!! 「どう  して」 息も絶え絶えに訴える凪さんに 今度は俺が答える番。 「俺も  ずっと、凪さんの事が 好きだったから」 あ。と思って 「性的な意味で」 ちゃんと付け足す。 「うそぉ‥‥」 ふにゃ。と困ったように下がる眉。 可愛くてまたキスしたくなったけど、我慢。 「本当。 知り合って、すぐ位から  ずっと。ずぅぅっと」 「嘘だぁ」 まだ信じてくれない凪さんを、もう一度ギュッと抱き締める。 「本当だってば。  ほら」 今の濃厚なキスで勃起したソコを、凪さんの下腹部に押し付ける。 「「あ」」 凪さんに欲情した証拠を見せたくて押し付けたのに、凪さんの勃起したソレとぶつかってしまった。 「ね。本当でしょ?」 そう言ってから、抱き締めた耳元で 「先に告らせてごめん  俺から告る勇気が無くてごめん 辛い想いさせて、ごめん」 それから 「でも、これはだけは  俺から言わせて?     凪    愛してる」 「ふッ」 またすぐ泣く凪さんの背中を、摩ってあげる。 「うん」 泣きながら俺の背中に、しがみつくように手を回して、しばらく泣いてしまう。 俺は凪さんが泣いてる間中、背中を摩ったり、頬にキスを、たくさん落としたりしていた            *            *            * 「ん‥‥?」 泣き疲れて眠ってしまった凪さんが、ふいに目を覚ます。 「あ。起こしちゃった?」 布団に寝かせていた凪さんの様子が分かるように、部屋を区切る襖は開け放していた。 「ぅうわぁ~~~  またやっちゃったぁ~~」 もぞもぞとゆっくり身体を起こして、ふらふらと俺の部屋まで来てくれる。 そういえば、前のアパートでも凪さんは泣いて、眠ってしまったのだった。 もう随分昔のような気がするけど、まだ半年前の話だという事が今では信じられない。 「無理しなくても良いのに」 見るともなしに見ていたテレビを消して、凪さんを支えようと手を伸ばす。 その手を取ると、そのまま隣に座って、俺の首に腕を回して来た。 「うほッ  凪さん、積極的じゃね?」 変な声が出てしまったが、構わず凪さんが身体を寄せて来る。 「ん~~~~  夢じゃない事を確かめたくて」 どくん。と心臓が跳ねる。 「そんな可愛い事言わないでよ」 「なんで?  本当の事なのに」 寝ぼけ て ないよな? なんて思ってしまうくらい、凪さんは別人のように甘えん坊になっている。 こいつは‥‥  ヤバイな。 また勃起しそうになるのを必死で抑え込む。 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか 「ずっと、こうやって  嗣治くんに触りたかった」 言いながら頬にキスを寄越す。 まって~~~。まって~~~!なぁぎさぁぁぁあん 「そ の前に」 俺は理性を保つのに必死だ。 「ポカリ!  ポカリ飲んどいた方が良いって! 買って冷蔵庫入れといたから! 俺。おれ! 凪さんの脱水症状が心配だなぁぁぁ!」 やっとやっと、そう言えば 「 ‥‥‥はぁぁあい」                 なんだか不満気に一旦俺からはがれる(・・・・)と、冷蔵庫からポカリを取り出し、速攻戻って俺を跨ぐ。   ‥‥またぐ? なんで? 凪さんの行動は本当、突拍子もない。 そのまま腰を落として、俺の胡座の上にストンと収まる。 まるでコアラの抱っこだ。 「な」 これは、マズイ格好なのでわ? 勃起しようもんなら一発でバレる。 なのに 「はい」 持ってきたポカリを俺に手渡す。 「はい、って  飲むのは凪さ‥‥」 「口移し  して」 言った言葉尻そのままに、口を開けて待っている。 「ちょぉぉぉぉ」 ほら!勃起が! 当たっちゃうから! 焦る俺を余処(よそ)に、また首に腕を回してから、ご丁寧に眼まで閉じている。 「もう!」 どうにでもなれ!と、ポカリのキャップを外して一口分、口に含む。 零さないようにとキャップを締めてテーブルにポカリを置いてから 「ん」 凪さんの後頭部を支えて、口付ける。 なるべく零さないように意識して口を薄く開いて、ちょっとずつ流し込んだポカリを、凪さんが喉を鳴らして飲んで行く‥‥ って、だから、エロいんだってこの人!! 空になった口腔内に舌を侵入させて、残った水滴まで(すす)り上げて行くようだ。 「ん。んン‥‥」 しばらく俺の口腔内を楽しんでから 「‥‥おかわり」 なんて言い放つ。 この人は。 自分がどんな表情(かお)してるか分かって言ってるんだろうか? 潤んだ瞳はとろん、と薄められ、肌は上気して桃色に色付き、美味しそうに熟れている。 今すぐにでも食べちゃいたいくらいだ。なんて古い言葉が頭を(よぎ)る。 そんなだもの。 俺が凪さんの言いなりになるには十分な理由で。 もちろん水分を取って欲しいのも本音だから、大人しくおかわりを献上させて頂く。 500㍉ペットボトルの半分ほど補給する頃には、ギンギンに膨張した俺のナニが、凪さんの形の良いお尻の谷間を何度も擦り上げていた。 「ン。んぁン」 キスに反応しているのか、擦れるソコに反応しているのか 凪さんの喘ぎ声が徐々に大きくなって行く。 「つ ぐ は ァ るゥ」 どエロイ声で求められて 「な ぎ‥‥」 俺も十分に焦らされて、本当もう、限界。 部屋の隅に纏めてある布団へ腕を精一杯に伸ばし、引き摺るように広げて行く。 そこに凪を横たえて、余裕も無くパジャマ代わりのTシャツとショーパンを、下着ごと剥ぎ取る。 汗のせいで脱がすのに手間取っている間に、凪も俺のシャツに手を伸ばし、脱がせてくれた。 お互い脱がせっこするように剥ぎ取り合っているのが、なんだか変な感覚だ。 まさか凪が、こんなに大胆な行動を取る人だったなんて。 想定外の嬉しさに、凪のやり易いように俺も身体を動かす。 「はあァ。良い身体‥‥」 凪に褒められて、妙に照れながら 「凪だって」 言いながら暫らく眺めて、溜息を漏らす。 その美しい曲線を確かめようと、舌と指とで確認して行く。 「ん。あァ‥‥」 キメ細やかな肌は、どこに触れてもしっとりと指に貼り付き、離れがたいと未練を残す。 そこにまた舌を這わせば、凪の甘い声が『キモチイイ』を伝えて寄越した。 「つぐ はる。 つぐはるぅ」 何度も俺の名前を呼んで、背中に回した指に力を込める。 「ん。んぅ。いたい、いたいよ凪ぃ」 「あァ。ン。ごめ  でも。悦すぎ て」 なんて、可愛い事言われてしまったら 「ちょッ。  挿れたくなっちゃうでしょうが!」 まだ解しても居ないのに。 そういう意味で言ったのに 「ん。じゃ  口でシテあげる」 答えるなりぐるりと反転。 「うわぁ。もう  パンパン」 恥ずかしい感想を述べてから、すでに先走りでぬらぬらしたソコを可愛らしくて柔らかい口唇で()む。 「う。わ ぉ」 凪。 の 舌 が そう思うだけで、ちょっと腰が引ける。 そんな俺の気持ちを余所(よそ)に、時々「ジュ」と音を立てて啜りながら、イヤラシく舌を使って扱いて行く。 た。 たまらん‥‥ッッッ 「あ。ちょ  出そ‥‥」 自分では、イク手前で訴えたつもりだったのに、あまりの気持ち悦さに我慢が利かず、心の準備もしていない凪の口腔内へと迸りを放出してしまった。 「ん!ッんんッ」 「あぁぁあぁ凪!ごめん!  止まんな‥‥ッッ」 最近抜きそびれていたのもあって、思いの(ほか)大量に出てしまう。 なのに、それを必死で飲み干そうとする凪の いやらしい顔が まる見え。 「は。あ ぁ‥‥んン」 マジで全部飲んだ凪が、今度は俺の精液にまみれたソコを綺麗にしようと、再び根元から舐め上げる。 いやそれ、ただ勃起するだけだから。 そう思ってから 『まぁ、まだ繋がってないしな』 と思い直して、俺も、目の前に無防備に晒されている凪のソコを咥え込んでやる。 「ん。ふ ぅン」 咥えながら喘ぐ凪の声も堪らない。 その声を聞きたくて、激しく扱いてやると、今度は口が疎かになる。 「あ あ ンん。だめ ェ」 そんな所も可愛いくて、もっともっと喜ばせたくなる。 一旦ソコを開放して、ヌルヌルになったソコは右手で扱きながら 舌は奥の窪みへと移動する。 差し込んだ舌はすんなり受け入れられて、すでに解れている事を示していた。 「あ あぁン。」 差し込まれた舌にフルフルと身体を震わせて悦ぶ凪を、一瞬疑いそうになった自分を嫌悪する。 泣きながら告白してくれた人の、何を疑うというのか。 一度舌を抜いて 「凪。もしかして  一人でシテた?」 意地悪を言ってみる。と 「ッッッ!!」 全身が、真っ赤に茹で上がる。 ほらね。凪は、こんなに可愛い人なのだ。 「凪って、ドスケベだったんだ」 わざと言葉にしてみると 「い 言うなッ」 照れてるのが丸分かりなのに、顔を両手で覆い隠す。 「エロ可愛いッ」 それだけ伝えて、再び窪みに舌を差し込む。 解してある、と言っても、凪を傷付けないために念には念を、だ。 奥まで差し込んで、唾液を塗り込むように丁寧に壁を撫で回す。 「ん ん。 はぁ あン」 手で隠しても漏れ出る声は、初めはくぐもっていたが徐々に鮮明に聞こえ始める。 塗り込んだ後は指を挿入して更に解しながら、ソコも一緒に扱き続ける。 「あン。あ あ ゃあン  イッ ちゃ」 「いいよ  イッちゃって」 耳元で囁くのと同時に果てる。 俺の手の中でヒクつく凪が本当に堪らない。 「凪  あいしてるよ」 もう、何度でも伝えたいその言葉を口にして、果てたばかりの凪には辛いかもしれないけど、自分の隆起したソレを、凪の背面から窪みに充てがい、先っぽを挿れてみて、様子を伺う。 「ん。 ぁはン」 キュン。と締め付ける感覚に安堵して、更に進めて行く。 「んン ん。ゃあ ン」 根元まで差し込んでも痛みを感じていなかった様子に、今度こそ本当に安心して、初めはゆっくりと腰をローリングして行く。 「あ あン イイ‥‥ッ」 凪の喘ぎ声が聞こえる度に、凪への気配りよりも快楽の方が勝ってしまっている自分に幻滅しながらも、 結局それを抑える事が出来ずにピストンも激しくなってしまい、腰を何度も打ち付けて行く。 その激しさに逆らおうと手足を踏ん張る凪の、汗ばむ背中にまで更に欲情を煽られて、一晩中夢中で抱き合ってしまった。 明日はきっと、仕事にならないだろうなぁ‥‥‥・・           *           *           *

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