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5.夏の終わり(7)
* * *
花火大会の後。
要と一緒に駅前まで戻る途中。隣の要のご機嫌の笑顔を見ながら、俺も幸せをかみしめてる。長い夏休みのはずが、いろんな出来事のせいで、思いのほか、あっという間に、もう終わりが見えている。
この先の未来を考えると、正直、不安がないとは言えないけど、今、こうして、要が幸せそうな笑顔が見られることが、俺の幸せでもあるから。
「……あ?」
俺の目の端に、要の親父の顔が見えた気がした。
チラリと目を向けると、誰かと話している姿が見えた。声をかけようかと、そちらに身体を向けようとした時。
隣にいたのは、見たことのない若い女性。
な……なんだ、あれ。
要の親父が照れくさそうに話している姿が……要に見せてはいけない、と、俺の中のなにかが警告している。
「柊翔さん、どうかしました?」
立ち止まった俺に気づいた要が声をかけてきた。慌てて要のそばに行く。
「ごめん、知り合いかと思ったら別人だった」
人ごみに紛れながら、要の親父たちの姿は消えていった。
なんだよ。
要の肩に手をまわすと、思わずギュッと力をこめてしまう。
「……どうかしたんですか?」
心配そうに見る要。
「いや、なんでもないよ」
ニコッと笑って、要とともに前に進む。
何があっても、俺は要のそばにいる。
絶対、要の笑顔は、俺が守る。
俺は、そう誓った。
俺と要の、高校最後の夏休みが終わろうとしていた。
-Fin-
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