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第三章・11

   やがて誠は露希から唇を離すと、口の端を上げた。 「いいキスだ。改良点はあるけどね」 「改良点?」 「まず、唇の圧は一定ではダメだ。押したり引いたりしながら、変化をつけること。舌は、絡める時は広げたままでいいけど、上顎をなぞるときはちょっと尖らせないと」 「……」  露希は、がっかりした。 (僕だけ、のぼせ上ってキスしてたんだ)  誠さんは、僕が好きだからキスしたんじゃない。  養育係だから、教育するためだけにキスしたんだ。 「じゃあ、もう一回やってみようか」 「はい……」  くちゅ、ちゅくと濡れた音をさせて熱いキスを交わしても、それはただのレッスンなのだ。  切ない想いを抱えて、露希は何度もキスを繰り返した。

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