82 / 100

第九章・8

『誠さんは、必要のない人間なんかじゃないよ。僕には、絶対いなきゃならない人だよ?』  海での、露希の言葉を思い出していた。 (あんなことを言ってもらえたのは、久しぶりだ)  以前、会社を辞める前に、外山に同じようなことを言われたことがある。 『神崎は、俺に必要な人間だ。どうだ? 手を貸してくれないか?』  荒んでいた誠は、のぼせ上って外山について行った。  組長と杯を交わし、若頭補佐として外山の右腕となって働いた。  だが、今では解る。 (外山さんは、損得勘定で私が必要だと言っただけなんだ)  誠は、中嶋組のブレーンとして力を発揮する。  そう考えたからこそ、誘ったのだ。

ともだちにシェアしよう!