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第十章・6

「あぁ、僕とっても幸せ。このまま、死んじゃいたいくらい幸せ」 「滅多なことを言うんじゃない」  物憂げな露希の言葉を、誠は強く制した。 「死んじゃだめだぞ、露希。生きてさえいれば、良いことがきっとある」 「うん。ごめんなさい」  そう、生きてさえいれば、誠さんにまた会えるかもしれないのだ。  たとえ、組長のものになっても。 「愛してるよ、露希」 「僕も、誠さんのこと愛してる」  囁き合いながら、いつしか二人はまどろんだ。  そして翌日、朝日はいつものように昇った。  だが、特別な一日が始まった。

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