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第十章・10

 最後に、外山が名乗りを上げた。 「親父さんには、会って欲しい人間が一人おります」 「うむ、会おう」  外山の隣に座っていた誠、のさらに隣に座っていた露希の腕が掴まれ、前へと立たされた。  一同の視線が、一斉に露希を射す。  露希は、竦み上がった。  そんな彼に、中嶋は低い声でつぶやいた。 「名前は?」 「え、あ、う」 『露希。何を言われても、いい返事をするんだぞ?』  誠の言葉を思い出し、露希は勇気を振り絞った。 「藤川 露希です」  張りのある声は、中嶋を満足させたようだった。

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