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第十章・11

「まだ若いが、しっかりしてる。外山も、そう思うか」 「はい。何せ、こちらの神崎がみっちり教育しましたから」  うんうん、と中嶋の顔つきは、どんどん緩んでゆく。  誠はその様子を見て、もはや後が無い、と感じていた。 (今なら、まだ間に合うかもしれない。言うんだ、親父さんに。勇気を出して)  露希を私にください、と。  指一本、いや、腕一本差し出しても構わない、とさえ思っていた。  誠は、露希が組長へ贈られるその時に、直訴する覚悟で今日を迎えたのだ。  頭でひねり出した姑息な手段は、通用しない。  ならば、心で訴えるしかなかった。  しかしそこへ、中嶋が意外なことを言い始めた。

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