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第十章・13

「しかし、餞別、とは? 私はどこかへ出向となるのですか?」 「神崎には、組を辞めてもらう」 「……!?」  声を失った誠に、中嶋は命ずるように言った。 「組を辞め、弁護士になれ。そして無罪請負人となった暁には、中嶋組のためにその腕を振るってもらおう」  悪くない話だろう、と外山が誠の肩に手を置いた。  その感覚すら、誠には現実離れしていた。  まるで、夢を見ているよう。  ただひとつ、自分を現実と結ぶ人が声を上げた。  露希だ。 「組長さん、外山さん、ありがとうございます!」  そして、さっそく誠の腕にすがりついた。  自分の腕を誠の腕に巻きつけ、二度と離れないようにしっかりと抱きついた。 「僕たち、幸せになります!」  その姿に、中嶋は笑った。 「どうやら神崎は、尻に敷かれそうだな!」  外山も、笑った。  その場が、笑いで包まれた。  露希も、泣きながら笑っていた。

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