99 / 100

第十章・14

「起きろ、露希。朝だぞ」 「ん~、まだ眠い~」 「8時だぞ。いいかげん起きなさい」  だってぇ、と露希は鼻にかかった声を出した。 「昨夜の誠さん、凄かったんだもん。僕、くたくただよ?」  みるみる真っ赤になってゆく誠が、そこにいる。 「じゃ、じゃあ、あと5分だけ寝てなさい」 「今すぐ起きられる魔法が、あるんだけど」  何だそれは。  ただ、すぐに起きてくれるならありがたい話だ。  せっかく焼いたパンケーキが、冷めずにすむ。  こそこそと小声で話す露希の声は、聞こえにくい。  誠は、顔を近づけて耳を寄せた。 「キスしてくれたら、今すぐ起きる♡」 「仕方が無いな」  誠は、露希に口づけた。  露希も、誠にキスをした。  二人の幸せな一日が、始まった。  幸せな日々が、動き始めた。

ともだちにシェアしよう!