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視線を感じてふと顔を上げると、孝弘があまり見たことない顔で祐樹を見ていた。穏やかな表情といえばいいのか。静かに見守るような目線というのか。
「なに?」
「いや、仕事モードの祐樹はかっこいいなと思って」
「なにいってんの?」
そっちこそ、と祐樹は思う。
シャワー上がりのシャンプーの香りのする濡れた髪をかき上げた孝弘は、どこか知らない男のようでまだ見慣れない。
会わなかった五年の間に孝弘はとても成長していて、祐樹の中のしっかりした学生さんというイメージを一気に覆した。頼りになるコーディネーターとして現れた孝弘に、仕事中どれだけドキドキさせられたことか。
でも当の本人はそんなことは思ってもみないようで、祐樹のことをかっこいいなどと言う。
「いやまじで。顔つきが違うもんな。きりっとしてて。祐樹のスーツ姿もすげー好き。ワイシャツの後ろ姿とかセクシーでたまんない」
「なんだ、結局そっちか」
祐樹が笑うと、手を伸ばした孝弘にぐっと抱き寄せられた。
クッションのうえにやわらかく押し倒される。抵抗しないまま、おとなしく口づけを受けた。気持ちがよくて思わず頬がゆるむ。
「どんな祐樹も好きだっていってんの」
こういうことを照れずに言えるってすごいよな。
孝弘の素直な言葉はとてもうれしい。自分にはないその素直さに祐樹は照れながらも感心している。
やさしく触れてくる手に任せて体の力を抜いた。Tシャツの裾から温かな手が滑りこんできて、祐樹の脇腹をなでる。
「おれも好きだよ」
なるべく気持ちを伝えようと口にすると、孝弘がうれしそうに目を細めた。
重なってくる体の温かさ、重さがいとおしい。
女性しか抱いたことがないからか、祐樹の体をたどる手つきは優しくて、なんだかこそばゆくなる。
くるみこむように抱きしめられて、その腕のなかで夜中までやさしく酔わされた。
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