95 / 95
18-7
翌朝、支度をととのえた孝弘は、玄関で祐樹と向かい合った。
出会ったころとは違って今は携帯電話もあるしメールもできる。会社に行けばテレビ会議で顔を合せるだろう。祐樹が赴任するまで、打ち合わせや会議はほぼ毎日だろうし、さびしく思う暇はないのかもしれない。
でも体温を感じられないのは、やっぱりさびしい。ここしばらくずいぶん一緒にいたせいで、よけいにそう感じるのだ。
「そんな顔するなよ。行けなくなる」
孝弘がもう一度、祐樹を抱きしめた。
いったいどんな顔をしてたんだろう?
祐樹は困って首をかしげた。そんなに頼りない顔をしていただろうか。
「大丈夫。1か月でしょ、すぐだよ」
意識して笑顔を作った。
きれいとだれもが見とれる王子さまのような微笑み。高校時代から訓練して鍛え上げた笑顔。
それを見た孝弘が困ったように眉を下げた。
「ごめん、やっぱ無理して笑わなくてもいいよ。その笑顔も好きだけど、俺のまえでは自然でいいから」
やさしく額にくちづけられた。
胸の奥がとくんと音をたてて、温かくなる。
「うん、大丈夫。行ってらっしゃい、気をつけて」
「ああ、祐樹も。北京で会おう」
大きなスーツケースを見て切なくなるが、あと1か月後には北京で会えるのだ。
玄関先でキスをした。
やさしく触れるだけのキスをして、お互い笑顔で思いを閉じこめるようにそっと離れた。
大丈夫。
キーフックの亀を見る。
たった1か月。
再会を楽しみにしていよう。
完
最後までおつき合いいただき、ありがとうございました(^^)
つき合いたてのカップルならではのドキドキや楽しさ、不安定な部分なんかを書いたつもりですが、いかがでしたか?
一言でも感想など頂けますと、本当に励みになりますm(__)m
この後、祐樹の中学高校生編「これもほどよく憂鬱な日々」を連載します。
そちらにも遊びに来てくださると嬉しいです<(_ _)>
https://fujossy.jp/books/19404
昨日10/9、過去最高閲覧数954、リアクション数も274となりました!!
北京→香港まで一気読みして、全ページにリアクション下さった方もいらしたようです。
本当にありがとうございます!!
ともだちにシェアしよう!