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第9話
9 飴と鞭
先生はベッドの上に胡座をかき、腕を組んでいる。
下着しかつけてない。
僕はタオルをかぶって、下着とTシャツを着込んだ。
「座れ」
「はい」
先生の前に正座する。
完全に叱られる体制だ。
「で、何か言うことがあるだろ」
「怒らせてすいません」
正座して、姿勢を正して頭を垂れる。
「…また抓られたいのか…」
「いいえ」
「何をそんなに考え込んでいるんだと聞いてる」
「………」
「白木、答えろ」
「…何を、どう言えばいいのかわかりません」
「………」
「色々考えすぎて、何をどう説明したらいいのか…」
ふっと先生がため息を吐いた。
「俺が淫乱だと責めていたな」
「責めたわけじゃ」
「責めてた。淫乱は嫌か」
「僕的には嬉しいです」
ちらりと先生を見上げる。
「………何なんだ」
先生が頭を掻いた。
「せ、先生はどうですか?」
「は?」
「ぼ、僕で満足できてますか?」
「…………そう言えばさっきもそんなこと言っていたな。…どう見たら、満足してないと思うんだ。さっきも二回もイかされたが」
二回を強調して言われる。
「でも、それは先生が淫乱だからで、満足とは」
「なるほど。そういう考えも出来るな」
「………」
「確かに俺は淫乱だと思う。だが、最初から淫乱だったわけじゃない。むしろ淡泊だった。男は初めてだが、だからと言って、誰にでも欲情するわけじゃない」
僕はじっと先生を見上げる。
「さっきの話をするなら、例えば村崎としようとしたとして」
僕は思わず耳を塞ごうとして、先生に止められた。
「無理だろう。お前にするように挑発すら出来ない。てか、考えただけで吐き気がする」
「…ほんとに?」
「俺は人に触れるのは嫌いだ、触るのもな。それもあって今までまともに付き合えたことはない。すぐにうざい、鬱陶しい、と相手に言ってしまった。俺は、お前には言ったことがないが」
「ないです」
「本当に不思議だ。なぜお前が鬱陶しくないのか」
「………」
どうしよう、嬉しいんだけど。
まだ半信半疑な僕がいる。
「淫乱、もあれはお前が悪いんだろう」
「え、僕ですか」
「お前が煽るから」
「え、煽ってるのはいつも先生じゃないですか。すぐ余裕なくした顔して、ヨガリ声もいっぱいあげて」
「そんなのお前も一緒じゃないか。余裕なくして熱っぽい目で俺を見て、俺の名前ばかり何度も呼んで」
「せ、先生だって、何度も僕を呼ぶじゃないですか。あれずるいですよ」
「中だしばっかするし」
「だって、あれ、僕的にマーキングなんですよ!肌に跡なんかつけられないから、せめて中にって」
「………そうだったのか」
「あ」
つい先生につられて。
「……どっちもどっちだ」
「そう、みたいですね」
僕は思わずクスッと笑った。
今度は先生も怒らなかった。
「先生、本当に僕だけですか?」
「なんだ、他に誰がいる」
当然という顔でいわれる。
「俺が他にも男がいると思ってたのか」
「…僕だけじゃ物足りないんじゃないかと思って」
「ばか、か」
「バカでいいです」
「この俺がそんなに人付き合いうまいと思ってるのか。誰もこないような保健室に閉じこもってる俺が?」
「でも、藍川先生とか」
「年に数回しか来ないぞ」
「え」
「親しいとは言えないだろ、この間来たその前は年の始めの方だ」
「え」
あれ?
僕、もっと親しいと思ってた。
先生に言われてみて、冷静に考えてみれば、そんな誰とでも親しくなれる人じゃない。
あれ?
「おい、どうした」
「なんか、僕、何をぐるぐる考えていたんだろうって」
「全くだ」
先生は息をつく。
「…さっきはスルーしてくれたが、俺はちゃんとお前が好きだ。お前も言ってたように、最初から、お前が告白してくる前から、な。告白されて自覚してから、気持ちが加速して、お前と触れ合うごとに貪欲になった。もっとお前と触れ合いたいと思うようになった」
先生。
「一度、お前の体温を覚えると、止まらなくなった。卒業まで待てと言っておきながら、たった一度の行為を繰り返し反芻して、自分で慰めても、お前に触らせても収まらなかった」
先生。
「出来ることなら、ずっと繋がっていたいとさえ思う」
先生の顔が少し赤い。
嬉しい!
嬉しくて、嬉しくて。
「だが勘違いするな。誰でもいいわけじゃない。お前じゃなきゃ」
たまらなくて僕は先生の口を塞いでいた。
先生の口を舌で犯して、掻き回して、吸い上げると、先生の手がきゅっと掴んできた。
「…最後まで言わせろ…。二度と聞けないぞ」
唇を解放すると、先生が微笑みを浮かべていた。
「すいません、それより先生にキスがしたくて」
素直に答えると、先生が笑う。
「…淫乱を責められた時は、どうしようかと思った…」
「責めてません」
「こればかりはどうしようもない。捨てられるかと思ったぞ」
「そ、そんなこと絶対ありません」
くくっと先生が笑った。
「さて、ここでお前が欲しいと言ったら、また淫乱だと責められるのか」
「…こだわりますね、実は気にしてたんですか」
「………」
先生が黙り込む。
「気にしてたんですね、すいませんでした」
ちゅっとキスをすると、先生がちゅっと返してくれた。
「え、っと、いいんですよね?欲しいって言いましたよね?ずっと繋がってたいとか言いましたよね」
僕は先生の足に手をかける。
「何をそんなに、確認して…⁈」
両足を引っ張ると先生がコロンと後ろにひっくり返った。
その上にのしかかる。
「………」
先生が呆れたように黙る。
先生の下着を剥ぎ取って、足を抱え込んで、僕を先生の入口に当てがった。
「…いつ、勃てたんだ…」
「えっと、ずっと繋がっていたい、辺りから」
そう答えながらぐいっとねじ込む。
「は、ああ」
さっきしたばかりだから、やっぱり簡単に入った。
そう言えばちゃんと後始末してないから、まだ中に僕の出したものが入ってるかも。
「…なあ」
「はい」
いや、もう動いちゃっていいですか?
先生の中すごいんですよ。
まだ先生は半勃ちだけど…。
「俺よりお前の方が淫乱だろ」
「否定しません、もう、どうでもいい」
腰を動かすと、先生がびくっと震えた。
「ん、ふぅ、ん」
あれ?ノリが悪くない?
勃ってはいるけど。
いつもならもうあんあん言ってくれるのに。
腰を回して、先生が一番喜ぶところを擦ってみる。
「ふ、ん、ん、んぁ」
あ、れ?もしかして、まだ気にしてる?
「先生、ねえ、声聞かせてください」
先生の内壁をぐりっと擦る。
「ん、ひ、ぃ、ん」
頭をぶんぶん振って、まるで快感を逃してるみたいだ。
でも内壁は僕を搾り取ろうとするみたいに、きゅうきゅう締めてくる。
困った。
でも必死で声を堪えてる姿も、くる。
もともと顔立ちは綺麗なぐらい整ってるから、こういう艶っぽい仕草が映えるんだ。
「でも、僕はいつもの乱れてる姿の方が好きだなあ」
思わず口に出すと、ぺし、と頭を叩かれた。
「…うるさい…。気が散る」
そう言いながらも先生の顔は真っ赤で。
僕は強く抽送を始める。
「んあ、んはあ、あ、あん」
少し声が出てきた。
良かった。
安心してさらに早く抽送を始める。
「あああ、あ、んんん、しら、き」
僕の名前を呼び始めると、もうかなり上り詰めている証拠。
僕はちょっと角度を変えて、腰を動かす。
やっぱりまだ僕のが中に残ってるみたいだ。
僕の動きで、中からかき出されて、ぐちゅっとかじゅとかやらしい音を立ててる。
「ん、んん、はあ、ふ、あ」
先生の腰が揺れる。
ちょっとずらした場所を突いてるから、もどかしいんだろう。
わざとそこを強く突く。
肌が当たる音がした。
「ああ、しら、き、あ、ちが、あ」
うん、違うのは知ってる。
でもさらに抉らんばかりに打ち付ける。
「い、やぁあ、しら、あ、しらき」
先生の背中が反って、胸が僕に擦り付けられる。
僕はその突起に口をつけると、先生の体が震え始めた。
「あああ、ああ、ん、しら、き」
凄い。
中が僕の動きに合わせて、煽動する。
「ひあ、あ、しら、ああ、ちが、あ」
先生が身を捩って、なんとか僕を自分のいいところに当てようとしてる。
「朔弥さん」
「ひ、いっ」
僕って、以外とSなのかも。
こういう時の先生を、すごく焦らしたくなる。
もう理性も手放しちゃってるから。
ほぼ言いなり。
「ねえ、朔弥さん」
先生のツボを外して、腰を引く。
先生は奥の方が好きだから、浅く出入りする。
「んんん、とも、き、んあ、はあ」
首を振って、腰もくねらせて、先生は喘ぐ。
よし、焦れてる。
僕はちょっとしたいたずらを思いついていた。
その方が僕も長持ちするし。
普通にやってると、すぐ先生に搾り取られちゃうから。抵抗しないと。
「どうして欲しいですか」
僕の言葉責めに、首を振って嫌がる。
「んん、んっく」
でも体は堪らないみたいで。
ほんのり赤みが増す。
「ね、朔弥さん」
「ん、おく、おくに、ん、は、あ、と、もきぃ」
ともひさ、と懇願してくる。
ううっ、やば、虐めてるはずが、僕の方にダメージが。
「とも、き、はや、くぅ、んあ、おく、に」
「うん」
やっぱ、ダメだ。
ぐっと押し込むと、先生の背中が撓って、そしてガクガクと震え始めた。
「ひああああああ、ん、ん」
あ、イっちゃった。
先生のおへその辺りに精液がぽたぽた落ちた。
中がぎゅうぎゅう締め付けて、僕を搾り取ろうとする。
それをなんとか堪えたんだけど、先生は仰け反ったままで、まだビクビクと震えている。
え、っと、動いてもいいかな?
今動くと、痛がるんだけど。
でも、僕ももう。
えい、動いちゃえ。
「い、ひ、い、ぃい、ああ、あ、いっ、んま、まて」
さっきよりも強く揺さぶると、先生の見開かれた瞳からすっと涙が落ちた。
「ごめん、無理」
「や、ああああああああ、い、た、ああああ」
ぎゅっと目を閉じて、枕にしがみつく先生を、僕は思いっきり突き上げる。
「いあ、あ、や、ああ、い、ん」
「朔弥さん、いい?」
痛がってるって分かってるくせに、こんな事を聞く僕はずるいと思う。
「んん、い、ん、あああ、いい、いい」
でも僕が聞くと、先生は痛みを忘れちゃうみたいで、また感じ始める。
「あああああ、とも、ああん、とも、きっいく」
「待って、まだ」
もうちょっと。
「あ、む、りぃ、い、ああああああ」
「朔弥さん、好きって言って」
「あああああ、す、すき、ああっ、ともき、すき」
先生、もっと言って。
「もっと、言って」
「ああ、すき、す、きぃ、だ、めだ、いく」
もう、先生はいく、しか言わない。
もう限界なんだろう。
て、僕もだけど。
さらに奥を目掛けて、大きな肌の当たる音を立てさせて、僕はラストスパートをかけた。
「ひぃ、い、あああああ」
「朔弥さん、さ、もん、さんっ、」
最奥に僕の精液をぶちまけると、先生がびくって跳ねて、イった。
ぶるっと身震いしながら、僕が余韻に浸っていると、先生がくたっと動かなくなった。
「え」
先生?
慌てて先生の頭を持ち上げると、完全に意識を失っていた。
「やっちゃった」
一気に射精の余韻から覚めた。
そして一気に疲労が押し寄せる。
それもそうか、お風呂からやりっぱなし。
とりあえず、僕も寝落ちする前に先生の中から抜け出すことには成功した。
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約1日半。
白木は俺の部屋にいた。
そして盛りのついた動物みたいに、ほぼ性行為で過ごした。
いや、あいつの若さのせいだけにするつもりはない。
今までの我慢とか、そういうものを俺自身吐き出した気がする。
この行為の難点は、汚れる、後始末が面倒ということだな。
風呂場では汚れても平気だが、ベッドへ移動してからは、もう、シーツを変える気にもならなかった。
白木が帰宅するギリギリの時間まで、イチャイチャ、お互いの身体を触りあった。
「じゃあ、ね、先生」
白木が最後にシャワーを浴びて、帰宅の準備をするのを俺はベッドから眺めていた。
動けないものは仕方ない。
俺はこのまま明日の朝まで寝る。
最後に白木が俺にちゅっと音を立てて、キスをする。
すっかり服を着込んだ白木は年相応の幼さがある。
ちっ。
さっきまで俺の男だったのに。
もう生徒の顔してやがる。
俺の舌打ちが聞こえたんだろう。白木がきょとんとする。
「なんでもない」
「本当ですか?」
「ああ、気をつけて、帰れ」
「うん、一旦水田の家に行きます。荷物、少し分けなきゃ…。帰り着いたら、メッセージしますね」
「ああ」
ドアに向かって歩き出す。
名残惜しいが、仕方ない。
ドアを開けて、出て行きながら俺を振り返り手をふる。
その顔は俺と同じで寂しそうだ。
俺も小さく手を振ると、最後ににっこり笑って、ドアの向こうに消えた。
ふううぅ、と思わずでっかいため息が出た。
「はやく、大人になってくれよ」
そう呟きながら、俺は布団に潜り込んだ。
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