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15.霧の中で(9)
「つーか、なんかこの前よりちょっと薄いな……?」
「!」
遅れて目を戻すと、顔を覗き込むように身を乗り出してきたギルベルトと目が合った。
近っ……近い近い!
ジークは逃げるように後ろに身を退いた。リンと小さく鈴が鳴る。
ギルベルトは舐めるようにジークの全身を眺めながら、更に距離を詰めた。
そんなギルベルトの背後で、ラファエルの呟く声がする。
「……それはよろしく……?」
ジークはちらりとそちらを一瞥したが、それ以上ラファエルに動く様子はなかった。彼はただ口許に手を当て、ゆらりとギルベルトに視線を転じただけだ。
(な、何……? 何?)
ジークはいまいち状況が把握できず、とにかく手の中の小瓶を握りしめ、じりじりと後退る。鈴の|音《ね》が揺れる。その背中がドンと行き当たる。リン! と高い音が響いた。
ジークがリュシーを待つのに選び、座っていた場所は大きな木の根元だった。行く手を阻んだのは、どっかりと佇むその太い木の幹だった。
「わっ……ちょ、待っ――」
逃げ場をなくしたジークの顔に、ギルベルトの手が伸びてくる。その指が頬を撫で、顎を捕らえる。振りほどこうにも、何故だか射竦められたように動けない。申し訳程度に、微かに鈴が震えるだけだった。
上向かされて絡め取るように視線を合わせられると、再びざわりと、ジークの|胎内《なか》で細波が立ったような気がした。
* * *
リンリンと不規則に鈴が鳴っている。それがひときわ大きく跳ねた時、波間を漂うようだったリュシーの意識が一気に浮上した。
「お。起きたか」
目を開けると、間近にロイの顔があった。
ロイは木の根元に座り込み、リュシーの身体を横抱きするように支えたまま、憔悴したその面持ちをまっすぐ見下ろしていた。
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