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【閑話】○○しないと出られない部屋/ラファ×ギル(1)
アンリが憂さ晴らしのためだけに作った魔法の塔。その一室に閉じ込められたギルベルト。
その話を耳にして、仕方なく迎えに行ったラファエルだったが、部屋に入ると、そのまま一緒に閉じ込められてしまい――。
* * *
「この役立たずのクソ天使! 何でドア閉めるんだよ!」
「閉めたんじゃありません。閉まったんです。勝手に。そもそも誰が役立たずのクソ天使ですか。どの口が言うんです」
「いだだだだ!!」
平板に言い返しつつ、ラファエルは摘まんだギルベルトの頬を強めに引っ張る。
それを振り払うようにして距離を取ったギルベルトが、若干の涙目で頬をさすりながら、「優しい天使サマはんなことしねぇんだよ!」と懲りずに吠えていた。
「はぁ……」
ラファエルはそんなギルベルトを尻目に盛大な溜息をつく。
それから確かめるように再びドアへと向き合い、僅かに視線を落とした。
そのドアはやはり開きそうにない。
開きそうにないというか、正確にはそれを試すことすらできないのだ。
だって通常ならそこにあるはずのドアノブ自体がないのだから。
外側にはちゃんとあったのだ。実際、ラファエルはここから入ってきた。
けれども、それが内側にはついていなかった。
アンリの仕業に違いなかった。
「あの性 わ……」
ラファエルは思わず毒づきかけたが、すぐさま何事もなかったかのように口を噤んだ。
アンリのことだ。いつどこで何を見ているか、聞いているか分からない。
実際、そんなことができるのかどうかは分からないが、あの魔法使い ならやってやれないことはない気もする。
「……まったく、勉強熱心なことで」
翻し、別の言葉で言い換える。
視界の端で、ギルベルトが「勉強?」という顔をしていたが、今は無視だ。
ここで皮肉だなんて答えていては言い換えた意味がない。
ラファエルは溜息を重ねながら、今度は窓際へと足を向けた。
翼を消した背にかかる白金髪 のまっすぐな髪が、そこから吹き込む柔らかな風にさらさらと揺れる。
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