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19.夢か現か(2)

 *  * 「っていうか……アンリ先生が…………なんて本当なんだろうか」  眠りに就く前、ジークは自室のベッドに寝転がり、すっかり見慣れてしまった天井を見つめながら、ぽつりと呟いた。  先日の修練の日、ジークが性欲がないと言って(妙な告白をして)しまった時には、さすがにカヤも目が点になっていた。  何事にも「まぁいいか」と基本へらりとした笑顔であまり動じない印象のカヤが、一瞬「この子は何を言っているのかな」という顔をしたのだ。少なくともジークにはそう見えた。  実際にはカヤは「そ、そっか」という心境だったのだけれど、魔法の話だと思っていただけに淫魔(そっち)の話かー! と結局切り替えるのに少々時間がかかってしまった。  ジークはもちろんすぐに弁明をした。  性欲がないと言ったのは、要するに淫魔の血が落ち着いたのではないかと言いたかったのであって、何もないこと(それ自体)を訴えたかったわけでない。というか、更に言えばそうなった結果として、もう自分は騎士団に戻ってもいいのではないかと考えているのだと、本当はそう言いたかったわけで――。 「俺、できれば少しでも早く騎士団(向こう)に戻りたいんです。やっと入団の資格がもらえたところだったし……」 「ああ、なんだ、そういうことか。突然なんの告白かと思っちゃった」 「すみません、なんか」  恥ずかしいくらい気持ちばかりが先走ってしまった……。  遅れて確認したリュシーが、何事もなかったかのように平然としてくれていたのがまだ救いだった。いや、もしかしたら本当に聞こえなかったのかもしれない。だとしたらその方がジーク(自分)としてはありがたいんだけど……。  耳まで真っ赤にしながら説明を終えたジークは、しばしそのまま俯いてしまった。  けれども、せっかくここまで話したのならばと、何とか自分を奮い立たせる。 「ちなみに……カヤ先生はどう思われます?」  視線を上げ、思い切って訊いてみると、カップを傾けていたカヤが「そっか、そうだった」と思い出すように独りごちた。

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