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大嫌いな男

本邸の中に入り廊下を歩いていると、ポスッと腰のあたりに軽い衝撃があった。 振り返れば小さな女の子が腰にしがみついている。 この子は同じ幹部である西倉さんところの娘さんだ。 こんなところに小さな子を連れてくるのもどうかと思うが…。 この組はそういうことに緩すぎるところがある。 「おーマイちゃん久しぶり。ちょっと背ぇ伸びた?」 「うん。マイね、3センチ伸びたよ!」 「そっかそっか〜。マイちゃん可愛いから、将来はべっぴんさんになるぞ〜」 そう言って抱き上げてあげると、マイちゃんはケラケラと嬉しそうに笑って抱きついてくる。 それが可愛らしくて、俺は堪らずうりうりと頬擦りをした。 「ああ、悪いな真志喜くん。面倒かけちゃって」 そうしてやって来たのは西倉さんだ。 温和そうな見た目をしているが、いざとなると血も涙もない冷徹男になる。 まぁ家族の前ではただのおっとり系パパだ。 「いやいや。マイちゃん可愛いし、俺は大歓迎」 「マイも真志喜くん好きー!いいにおいするー!」 ギュッと抱きついてくるマイちゃん。 あらあら、おませさんだこと。 「マイちゃんはホント可愛いなぁ。もう少し大きくなったら、俺とデート…」 「あぁ、帰ってたのか、真志喜」 「!」 聞き覚えのあり過ぎる声に体が跳ねる。 そしてそろそろと後ろを振り返った俺は、ゲッと盛大に顔をしかめた。

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