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若頭補佐5
「流石にヒヤヒヤしましたよ。真志喜さんと一緒にいると、寿命が縮む思いばっかします…」
運転をしながら舎弟の近藤がそう言うと、同じくと言うようにもう1人の遠野もコクコク頷いた。
そんな2人の疲れ果てた様子に真志喜は唇を尖らせる。
どちらとも真志喜より歳は上だが、真志喜に対しては敬語での会話をしている。
そういう身分のようなものを初めは毛嫌っていた真志喜だが、今ではそういう決まりも一応必要なのだと理解していた。
「第一さ。“日 南 組”なんて可愛い名前だから他の組に舐められるんだよ」
「え、不満言うとこそこですか…」
「また無茶苦茶なこと言って…」
「なんだよ、お前ら思わないわけ?ヒナミだぞ?ヒナミちゃんだぞ?」
(自分の苗字も日南でしょうに…)
ワーワー抗議する真志喜に、2人は苦笑いを浮かべた。
そんな舎弟の反応も気にせずに、真志喜は大きく溜息を吐く。
「あーあ。ゴツい男でヒナミなんて名前、需要も何もないし。あ、可愛い子とか綺麗な人なら大歓迎だけどなー」
サラッと失礼過ぎることを言って表情筋を緩ませる真志喜。
彼はその外見とは不釣り合いに、かなりの肉食系だ。
可愛い、または綺麗な人を見つけると、男女構わずナンパしまくっている。
そうしているうちに、車は本邸へと辿り着いた。
基本あっちこっちに仕事で行かされる真志喜はなかなか本邸に戻れることが少ない。
今回も約1ヶ月ぶりの訪れだった。
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