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大嫌いな男8

発砲された玉がコンクリート剥き出しの天井にめり込む。 拳銃相手に一切の躊躇もなく突っ込んだ真志喜。 周りはこれを度胸とか根性という言葉で片付けるが、俺はそれは違うことを知っている。 真志喜はただ、自分の命に対しての関心が薄いのだ。 「…ったく。発砲とか、後処理の大変な真似しやがって…ッ」 「ひぃ…っ」 心底不快そうに目をつり上げる真志喜に、相手は縮み上がる。 取り上げた拳銃は、無造作に俺へと投げ渡された。 「迅さん!1人取り逃しました!」 「あーもー忙しない」 2階から見下ろすと、1台の車に向かって走る男が。 「追いますかッ?」 「いや、この距離じゃ間に合わない。それよりも今は捕まえた奴らを…」 一瞬目の前を人が横切った。 咄嗟に目で追えば、迷いなく窓から体を乗り出す真志喜の姿が。 そしてそのまま身を投げ出すと、真っ逆さまに2階から落ちて行った。

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