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あの頃

「あー腹減ったなー。清さんなんか作ってよ」 「そんな子供みたいなこと言って。まだ昔の方がよっぽど大人びていましたよ」 「違うって。あれただの長過ぎる反抗期だから」 「反抗期ねぇ…。そんな簡単なものでもなかったですけど」 すっと目を伏せ、清さんが呟く。 きちんと整えられた髪の毛に、背筋の伸びたスラッとした体型。 いつ見ても清さんはカッコよくて綺麗だと思う。 歳は35で、大人びている彼にはついつい甘えてしまい、その度に「子供みたいに…」と注意をされてしまう。 「あ。あの人はもしかして、今朝正嗣さんが話していた人でしょうか」 「え?」 立ち止まった清さんはそう言って、庭(立派な日本庭園だ)を挟んだ向こうの廊下に目を向ける。 同じくそちらに目をやった俺は、瞬間固まった。 そこにはまるで愛らしいお人形のように整った顔の少女、いや少年、いや青年が立っていたのだ。 途端俺の可愛い子センサーがビビッと反応し、間髪おかずに庭へと飛び出す。 後ろから俺を呼ぶ声が聞こえた気がするが構わない。 「こら真志喜!」 「え、……っうわぁ!?」 清さんの上げた声にこちらに気づいたお人形さんは、突っ込んでいく俺に驚きの声を上げた。 その直後には俺は彼の目の前まで辿り着き、ギュッとその両手を握りしめる。

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