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バカなやつ10

「…真志喜。ほんとに、大丈夫…?」 「っ、だから、いいっつってんだろ…っ」 「でも、さっき倒れて…」 こいつは。いつも無理やりするくせに、こういう時だけ変な心配しやがって。 そんな気遣いなんていらない。 寧ろ今回は、乱暴に扱って欲しい気分だった。 強引に、手酷く、荒っぽく抱いて欲しい。 服を脱ぎ捨て、迅の上に跨がる。 そして迅のモノを後ろへとあてがった。 無理やり挿れようとして、鋭い痛みが走り顔を歪める。 「っ…」 「真志喜、ちょっと待って…っ」 俺の肩を掴み体を離した迅は、何故だか俺よりも痛みを堪えるような顔をしていた。 それに俺が動きを止めると、迅は真っ直ぐに此方を見つめる。 「真志喜。俺はこんなことは望んでないよ。そういう自虐的な行為をするのはいけないことだ」 「でも今俺は、こうやって抱かれたいんだ。お前が望んでなくても、俺は望んでる」 「…そんな望みなら、いくら真志喜でも叶えてあげられないよ」 「…っ、んっ」 重ねられた柔らかい唇に瞠目する。 その口付けの優しさに、俺はくしゃりと顔を歪めた。 情けない。 心底自分が情けない。 俺は昔から何も変われていないんだ。 過去に囚われて、縛られて、歪んだ考え方しかできない人間になってしまった。 こんな自分が醜い。 時折、誰にも見られたくない、消えてしまいたいという激しい衝動に駆られる。 でもそんな時、いつも誰よりも早く気付いてくれるのは迅だったんだ。

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