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バカなやつ9
「っ!…真志喜っ」
「……」
目蓋を開けると、俺を覗き込む迅がいた。
その余裕のなさそうな顔が笑える。
どうやら俺は、気を失ってしまったらしい。
それであんな昔の夢なんか…。
「……真志喜」
暫く黙り込んでいた迅が口を開いた。
目を向ければ、真剣な表情をした迅と目が合う。
「やっぱり俺は、真志喜を守りたい」
「……」
「真志喜が、何よりも大切なんだ」
──あいつはお前に、心底惚れてんだよ。
正嗣の言葉が頭を過った。
なんだか体の力も抜けて、自嘲気味な笑みが浮かぶ。
バカなやつ…。
こんな俺に、こんな風に依存して。
自分を自分で縛り付けて、離れていこうともしない。
だから俺も、こんなにお前を求めてしまう…。
「……お前が死んだら、俺も死んでやる」
「っ、…真志喜」
「これだけは忘れんな。お前の命は、俺の命だ。粗雑に扱うんじゃねぇぞ」
後はもう、好きにしやがれ。
どうせ俺は、お前を止めることなんてできねぇんだから。
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