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高校デビュー4

「マスク、血が付いてる…」 外に設置された流し場で、冷たい水で血を流しながらげんなりする。 案の定血が付いてしまったマスクはもう使えなさそうだ。 こんな時のために常にもう一枚マスクを持ち歩いていてよかった。 幸い眼鏡は無事なようで、そっと外して流しの隅に置いておく。 まったく、僕は何をしているんだろう。心底みっともなくて涙が出そうになる。 もういっそのことマスクと眼鏡を外してしまおうか。 そうすれば何かが変わるかもしれない。 友達だってできるかもしれないし、こんな肩身の狭い思いをしなくて済むかも…。 そこまで考えて僕は溜息をついた。 中学を卒業した時、決心したじゃないか。 もう二度とあんな目には遭いたくないって。 もし眼鏡とマスクを取ってしまったら、また多くの被害に遭うかもしれない。 そんなリスクがある中で顔を出せるなら、初めからこんなことはしていないだろう。 「しっかりしなきゃ」 最後に鼻を手で拭って、虎介は蛇口を閉め顔を上げる。 すると背後から足音が聞こえた。 「天野!先生がやっぱ保健室行って来い、って…」 視線が、交わる。 振り返った先にいた羽純がゆっくりと目を見開くのを呆然と眺めていた虎介は、次の瞬間自分の失態に気づき勢いよく顔を前に戻した。 (しまった…!) バクバクと心臓の音がうるさく鳴り響く。 身体中から嫌な汗が滲み出てくるのを感じ、指先が震えだす。 顔を見られた。 今まで隠してきた顔を、こんな形で。 背を向けたことで彼が今どんな反応をしているのかわからないけれど、再び顔を向けることなどできない。 二人の間に静寂が起きる。 「あ、天野、なのか…?」 「…っ」

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