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予期せぬ展開
僕は日頃、お弁当は人の来ない東階段で食べている。
理由は顔を見せられないためだ。
ご飯を食べる時はどうしてもマスクを取らなきゃならないから、人前で外せない僕は隠れるしかない。
冬が近づいている今、さすがに階段は冷えて寒い。
それでも今更教室で食べる気も起きないし、顔を見られる危険性もあるから未だに場所を変えられないでいる。
お弁当はいつも自分で作っているものだ。
我が家は僕が幼い頃に母が亡くなっているので父と兄と僕の三人で暮らしているのだが、家事は主に僕の役目となっている。
大学生の兄はいつもバイトやサークルで忙しそうだし、父も仕事で帰りは遅い。
そうなると必然的に家のことは僕がすることが多くなっていたのだ。
そのおかげもあり、料理はちょっとした僕の特技だ。
本やネットを見たりしながら練習を積み重ねてきた料理は、家族からは中々評判が高かったりする。
今日も今日とてお弁当の僕(父と兄の分も作っている)は、一人悲しくぼっち飯を食べ始めた。
うん。今日は卵焼きが綺麗に焼けたな。
アスパラベーコン巻きも手軽だけど美味しい一品だ。
ネットで見て試しに作ってみた海老カツも美味しい。
中は海老とはんぺんが入っていてプリプリでふわふわ。
そして外はいい感じにサクサクしていて食感が楽しめる。
これは揚げたては最高だろうけど、作り置きも十分可能なおかずだな。
「また今度作ってみよう」
「あっ、こんなとこにいた」
「……え?」
静かな空間に自分以外の声が響いた。
顔を上げると、階段の下からこちらを見上げる人物と目が合う。
癖のある黒髪。
162センチの僕よりも、15センチは高い身長。
アーモンド形の猫のような瞳。
優しく、爽やかな笑み。
──羽純くんだ。
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