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予期せぬ展開2

何故ここに!?と驚愕すると同時に、顎まで下ろしていたマスクを急いで顔に装着する。 なんてことだ。羽純くんに一度ならず二度までも顔を見られてしまった。 あまりの失態にまた嫌な汗が出始める。 「いつもここで食べてんの?」 「……」 「暖房かかってないし、寒くない?」 「……」 「えっと。結構、気にしてますか…?」 何も言えないでいる僕に、羽純くんは申し訳なさそうな声を出す。 僕の不注意が原因だったのに、彼を困らせてしまった。 罪悪感が込み上げてきて、僕は恐る恐る彼を見る。また、視線が交わる。 「俺、見ちゃったこと謝りたくて、天野探してた」 「…!」 僕なんかにわざわざ謝ろうとしてくれていたのか。 なんていい人なんだろう。前々から知っていたけど、改めてその人の良さに感動する。 ここまで気遣いができる人に、無駄な心配をかけさせてしまった。 さらに罪悪感が増し、堪らず僕は口を開く。 「そ、そんな、別に…。あ、あれは羽純くんが悪いわけじゃ、ないので…っ」 そう言う僕を、羽純くんは無言で見つめていた。 その視線におどおどしていると、不意に彼が階段を上ってくる。 「あと、もう一つ。眼鏡置いてってたから」 「え。……あ!」 言われてみれば、自分は今眼鏡をしていない。 あまりに動揺していて気づかなかった。 おそらく流し場に置いたままだったのだろう。 ほんと何から何まで申し訳ない。 「ご、ごめんなさい…。ありがとございます…」 「いいよいいよ。…この眼鏡って度、入ってないよな。伊達?」 「っ、え、と…」 まずい。まずいまずい。僕が変装が好きな変態だと思われてしまう。 どうすれば弁解できるだろうか。でもそうなると一から説明する必要が…。 「天野ってさ。なんで顔、わざと隠してるの?」 「…っ」 核心を突かれて、僕の体は硬直した。 理由は、今までこの顔のせいで誘拐されたりセクハラされたりストーカーされたり襲われたりしたからだけれど…、正直情けなくて言えない…。

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