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予期せぬ展開4
「天野ー!このゲーム知ってるー?」
「天野ー!この漫画ちょー面白いよ!」
「天野ー!ライン交換しよー!」
何故だかあれ以降、よく羽純…シンくんが話しかけてくるようになった。
周りも彼が落ちこぼれの僕に絡むのに驚いている様子だ。向けられる視線が辛い…。
「なにシン。天野と仲良いの?」
「どんな組み合わせだよ。ウケる」
「天野くん、シンに絡まれてかわいそ〜」
「うるさいよお前ら。そんなんじゃないから!」
そう言ってみんなケラケラ笑いながらシンくんに話しかける。
僕はもうこの空間から逃げ出したくて仕方なかったけど、シンくんは別に面白がって話しかけてくるわけではないようだった。
どういう心境の変化かわからないけど、彼は冗談抜きで僕と友達になりたいらしい。
結局ラインも交換してしまった。
高校に入ってから初めてのライン交換。
戸惑いと同時に嬉しさも感じてしまう。
「これでいつでも連絡できるなっ。ありがと天野」
「……」
満面の笑みを向けられて、つい俯いてしまった。相変わらず眩しい人だ。
彼の考えていることがわからない。
僕が曖昧に頷くと、彼は嬉しそうに去って行った。
***
早速その夜、彼からラインが送られてきた。
今日は父さんが出張で家にいなかったので、碧兄と二人で夜ご飯を食べていた。
その後リビングで課題をしていた僕は、突如鳴った携帯に体をビクつかせる。
「通知音に驚くなよ。虎介」
パソコンを打っていた碧兄がソファーから僕に笑いかけた。
天野 碧兎 は大学3年生の21歳だ。
僕とは違う深い藍色の髪と、整った顔立ちはとても大人びて見える。
いつも落ち着いていて優しい碧兄は、小さい頃から僕のヒーローだった。
彼を見ていると一層自分の名前に自信がなくなってくる。
彼が《兎》なのに対して僕は《虎》だ。
一度父さんに名の由来を尋ねたところ、死んだ母さんが猫が好きだったのだと言われた。
だったら普通に《猫》を名に入れるものではないのかと思ったが、猫だとしっくりくる名前が見つからなかったのだそうだ。
どうやらうちの両親はとてもマイペースな人たちらしい。
「高校の友達?」
「うん、まぁ…」
曖昧な返事をして携帯をとる。
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