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幸運なもの12

まだ帰ってこないからと、空いている駐車場に車を停めた逹己。 扉から碧兎が出てきたのが分かりシートベルトを外していると、ふと別の人影が視界に入った。 こちらに走ってきているその姿には見覚えがある。 車から降りてよく見れば、相手はやはり自分の知っている人物だった。 「シン」 「え?シンって……」 「碧兎さん!」 呼ばれた碧兎は弾かれたように顔を向ける。 驚いた俺は碧兎同様、走り寄ってくる相手へと視線を向け瞠目した。 シンも俺に気付いたようで「えっ」と声を上げる。急いで来たのか、息が荒く汗も流れていた。 「なんでタツさんがここに!?」 「いや、それはこっちの台詞なんだが……」 「え。2人知り合いなのっ?」 今度は碧兎が驚く番だった。 2人に視線をやり目を瞬かせている。 「あぁ。前話した中学時代の知り合い」 「え、あの一匹狼くんっ?」 「そうそう」 「一匹狼?なんの話ですか?」 流れが分かっていないシンは、汗を拭いながら訝しそうな顔になる。 というか、俺はこの2人が知り合いってことに驚いているんだが。 「シン。お前、どうしてここに?」 「虎介が帰って来てないって連絡があったので。この前会ったでしょ?俺と一緒にいた綺麗な男の子」 「……え」 「なにっ?逹己、虎介と会ったことあるのっ?」 「マジか……。あの子、碧兎の弟だったのか……」 衝撃の事実に固まる中、ふとあることが過ぎる。 あの日からずっと感じていた不安。 そして、彼の今の状況。 これは……もしかすると……。

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