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番外編 優璃・志音11

生意気で上から目線で、いっつも俺のことバカにしてくるけど、誰よりも側にいた。 ガキの頃、俺がよくいじめられてた時、傷の手当てとかしてくれたり、隠された上履きを一緒に探してくれたりもした。 こいつに泣かれると、調子が狂う。 いつもこちらをバカにしてくるくらいが、志音らしい。 「…正直、いきなりお前に対して、好きとかどうとかは、考えられねぇ」 「……」 「だから、時間をくれ」 「……へ?」 ぽかーんと間抜け面になる志音の鼻をきゅっと摘む。 自分でも今、大分混乱してるけど、不思議と拒絶するという選択肢は思い浮かばなかった。 「いろいろ考える時間。こう見えても俺、絶賛失恋引きずり中なんだわ」 「……失恋って。虎くんといる時、まだデレデレしてるくせに」 「っ、そ、れは…反射的なもんだからしかたねぇの!」 ちょっと恥ずかしくなり、誤魔化すように志音の頭をがしがしとかき回す。 「わっ、ちょっと!なにすんのさ!?」 「うるせ!その顔なんとかするまで教室戻らせねーからな!」 「っ、誰のせいだと思ってんの!?もう授業始まっちゃったじゃん!」 いつも通りのケンカ。 何も変わらない。 でも、決定的に今までとは違う気もした。 動き出していく。 そう、無意識に悟る。 先の見えない日常の中で、少しずつ変化が訪れ、新しい日常が生まれる。 そうして俺たちはまた一歩、先に待つ未来へと、踏み出していく。 番外編 優璃・志音(完)

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