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2. 誰も知らない
夏休みが終わって、新学期が始まるまで
内心ドキドキしていた。
新田が誰かに告げ口したんじゃないか
学校に出てこないんじゃないか
小さな心配と罪悪感で、実は小心者の俺は
地味に追い詰められて行った。
始業式の体育館で、密かに新田の姿を探した。
俺の心配をよそに新田は何事も無かったように
他の生徒たちに混じって普通に現れた。
意識的に俺から目を反らして。
どこか気だるそうに、あくびなんかしながら
他の生徒とポツポツ話しをしている。
あんな事があるまで新田はノーマークだった。
でも1度深い関係になってしまったからなのか
新田からエロいフェロモンが漏れているようで
見ないように気をつけても、気づくと目が勝手に
新田を捉えてしまう。
シャツの隙間に見え隠れする鎖骨も
長袖のシャツを捲って、露になってる細い腕も
目にかかった前髪を、指先で少しだけはらう
しぐさも…全部。
ー コイツこんなエロかったっけ…
俺は学生の時に、ホームステイした先の家の
少年と、戯れに寝て以来、男にハマって
それからゲイになった。
女とは寝れないか?と聞かれたら
できなくもない気もするけれど、今は興味がない。
そんな俺にとって、数年前までは男子校で
少子化のお陰で共学にはなったものの
7対3で男子の方が多い、この高校は天国とも
言えた。
手を出した事はない。でも好みの生徒を見つけ
眺めて、時々ふざけてボディタッチなんかして
それだけで俺は満足してた。
犯罪行為に走るほど切羽詰まってもいなかったし
ノーマルの生徒に手を出すほどの勇気(?)だって
無かったからだ。
棚ぼた状態で、ついに1線を越えてしまった
けれど…あんな事はもうないだろう。
チラリとこちらを見た新田と、バチっと目が
合ってしまったけど、お互い慌てて目を反らした。
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