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15. 2
先生はキラキラ太陽のような王子様じゃなかった。
二人きりで会うときにしか見せない、どこか
病んだ暗い1面に、俺はすっかり参ってしまった。
先生を離したくなくて、捨てられたくなくて
一緒にいるためなら どんな事でもできる気がした。
先生に俺以外の誰かがいるのは気づいてた。
時々連絡がとれなくなるし、一緒にいるときに
何度も携帯が鳴っていた。
先生のそんな行動は俺を焦らせて、
どんどん不安は大きく、醜く、おかしな方向に
俺を走らせた。
そして、やってはいけない事をした。
先生に黙って、先生の家の合カギを作ったのだ。
別に先生の留守中に入ろうなんて思ってた
訳じゃない。
また連絡がとれなくなったり、怪しい行動が
見られたら、コッソリ家に忍び込んで
現場を押さえてやろう。そんな気持ちだった。
できればそんな事あってほしくない。
鍵を使いたくなるような事なければいい。
そう思っていた。
でも、その日はやってきてしまった。
翌日出かける予定は無くなったけど、
いつものように先生の家で会おうと、言いたくて
電話をかけても出ない。
メッセージを送っても既読にならない。
俺は携帯を見つめて、一晩中眠れない夜を過ごし
早朝に電車に飛び乗って先生の家を訪れた。
震える手で、できるだけ物音をたてずに
玄関のドアを開ける。
玄関には見たことの無いスニーカー。
心臓がバクバク鳴って爆発するんじゃないかと
思った。
シンと静まりかえった家の中。
俺はそのまま逃げ出したい思いと、寝室に飛び込んで
暴れてやりたい思いでクラクラ揺れた。
静かに忍者にでもなったように気配を消して
寝室の前までたどり着く。
ゴクリと生唾を飲み込む音すら、うるさい。
震えながらドアに手をかけたときに
微かに声が聞こえてきた。
「……まだ、寝てていいよ」
優しい、俺の大好きな蒼佑の声だった。
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