80 / 150

15. 3

休みの間、何度も蒼佑から連絡がきたけれど 俺は1度もそれに応えなかった。 どうやって連休を過ごしたかも 覚えていない。寝たり起きたり…。 どこにも出かけなかったと思う。 週明けに定まらない思考のまま学校へ 向かっていると、卒業間近の間宮先輩から メッセージがきた。 放課後ゲーセンに誘う内容だった。 その時思いつきでメッセージを返した。 (ゲーセン行きたいです! 先輩たちが登校しなくなって つまんないですよ ちょっとだけでも今日学校 来ません?) 先輩は来た。 蒼佑の授業をサボってLL室へ誘った。 間宮先輩と俺が付き合うことを 蒼佑がよく思ってない事は分かっていたから 授業をサボってこんなところで二人でコソコソ 会っているというだけで、蒼佑には癪だろう。 そういう意味では、ここに先輩を誘い出しただけで 俺の企みは成功したと言える。 でもそれだけじゃ足りない。 ベッドで寄り添う ふたりを見てしまった あの時の俺の気持ちには到底届かない。 「先輩、今日香水してます?」 「おお、いつものな」 先輩は放課後や、休みの日には香水をつけていた。 「……いい匂い」 近づいて顔を寄せてクンクン耳の近くを嗅いだ。 「今度貸してやるよ」 「ホント?やった」 俺がじゃれつくように先輩に抱きついくと 先輩は笑って俺の頭をポンポン叩いた。 蒼佑もよくやってくれる。 子供扱いされてる気もしたけど、嬉しかった…。 「……こうしてたらさ、借りなくても 俺もいい匂いになるよ」 「確かに、匂いって移るよな…」 ねだるように至近距離で見つめれば 先輩は少し顔を赤くした。 俺は知ってるんだ。 強がって、悪ぶってるけど 先輩は本当は優しくて、押しに弱いこと。 「先輩キス上手いって言ってましたよね」 以前、先輩たちと飲み会をした時に ふざけて誰が1番キスが上手いかというネタで ずいぶん盛り上がってた。 「何だよ、試したい?」 冗談のつもりだったのだろうけど 俺はその一言を待ってた。 自分から言わせれば、もう簡単だ。 「うん、教えて 俺も上手くなりたい」 俺はこの日を一生後悔することになる。

ともだちにシェアしよう!