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「それで、どうなったの?」 バイトの同僚の植杉ルミがカシスソーダを 飲みながら聞いてくる。 「それから…」 俺は少し考えてため息をついた。 「逆ギレ。それはもう烈火のごとく…」 「そうだと思った」 「え、なんで?」 「だって話し聞いてるだけで、分かっちゃったよ その人って束縛タイプじゃん。 そんな人に、そんなトコ見せたら反省どころか キレるか捨てられるかどっちかでしょ」 ルミはタブレット式のメニューを見ながら あきれたように言った。 「……今にして思えば…そうなんだよね… でもその頃そんな事考える余裕なくて… まぁそれ以来、先生とは会ってないんだ」 俺が枝豆をつまみながらそう言うと ルミは毛先だけ金色の髪を揺らして カクッと首をかしげた。 「は?会ってないって? 別れたとしても学校で会っちゃうじゃん」 「あ、うん。。 先生はそれっきり学校に出てこなかったんだ 3学期は病欠、新年度には体調不良で辞めたって」 「えーーー!マジで? じゃぁ櫂のせいで先生は先生を辞めちゃったの!?」 「…ぅぅ」 ストレートにこんな事言われたの初めてだ。 っもっとも、この事を誰かに話したのも 初めてだけど。 「それで、それからずっと忘れられないってわけ?」 「……うん。ゴメン」 実はルミから何度も 付き合おうと言われて 断っていた。 居酒屋のバイトで知り合ってすぐに仲良くなり サバサバして裏表の無い性格のルミは 歳も同じ20で、一緒にいて楽な友達だった。 バイト以外でも会ったり、何の用もなく 連絡を取り合ったりしているうちに 最初は冗談っぽく…もう、付き合っちゃう?と サラッと誘われ、本気で好きなんだけど。 何でダメなの?好きな子がいるの?、と 会うたびに追求が厳しくなり、俺はついに 自分がゲイであることを伝えた。 そして俺は高校生の時の過ちを ルミに話して聞かせる事になったのだ。 今でも忘れられない、やり直したい相手がいると。

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