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蒼佑が学校を辞めたと知って、俺は必死で蒼佑に 連絡をとろうとした。 でも携帯は解約され、マンションに行っても 家に入るどころか、インターフォンに出ても もらえず、本当に居ないのか居留守なのかも 分からなかった。 そして何度目かの訪問で、引っ越した事を知った。 ちゃんと謝りたかったんだ。 浅はかな行動を。 先輩の事は何とも思ってなかった。 ただ蒼佑に同じ気持ちになってほしかっただけ。 でもその先まで考えてなかったんだ。 本当にバカだった。 蒼佑は何度も俺に会おうとしてくれたのに 俺が子供で、どうしても許す事ができなかった。 謝る隙さえ与えなかった。 ちゃんと話していたら“今”はきっと変わってた。 蒼佑と会えなくなった現実を受けとめられないまま 俺の時間は高校2年で止まってしまった。 せめてもう一度だけ会いたい…。 まだ俺の事を怒ってるだろうか。 元気にしているのか。 今何をしているのか。 あの日蒼佑のマンションにいたあの人と 今も一緒にいるのか…。 元気で幸せでいるなら…それだけ分かれば 俺も新しい一歩を踏み出せるかもしれない。 「びっくりしたけど、話してくれてありがと… なんか悔しいけど…応援するよ。 いつか会えて、ちゃんと前に進めたらいいね…」 「……うん…ありがと。 ルミがこんなにちゃんと話し聞いてくれるなんて 思わなかったよ。 俺、誰にも この話し したこと無かったから 聞いてもらえてちょっとスッキリした」 「先生のこと忘れてさ、女も悪くないなって 思えたらいつでも待ってるよ」 ルミは笑ってウインクしてみせた。 俺はそれを見てプッと笑った。 「そうだな…そうできたら、それが1番 幸せなのかもな…」 いつかそんな日が来るのかな? 普通に結婚して子供なんてできたりして…。 何度も想像してみたけど、続かなかった。 ちっとも現実味が無くて。 先生と過ごした日々の方が、 薄れていく思い出の方が、 俺の中ではリアルだった。

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